愛知県には現在15の自然環境保全地域が指定されている。すぐれた天然林、貴重な動植物の自生地や特異な地形・地質等を県民共通の財産として将来にわたって保全していくというものであり、吉祥山は特異な地質がみられる地域であることから条例制定後二番目に早く、昭和51年10月に指定を受けている。吉祥山の北側には中央構造線が走っていてこの断層に沿って南東側には三波川変成帯が分布しており、吉祥山はこの三波川変成帯を特徴付ける特異な地質が見られる地域となっている。
かつて山火事やマツクイムシの被害を受けた吉祥山は県の生活環境保全林整備事業によって整備され、現在豊橋市側の山麓には駐車場や休憩場、トイレも完備している。また山頂等に露頭する角閃石片岩に月の光が当たり、キラキラ輝いて見えることに因んで付近一帯は月の森と命名されており、半日あれば森林浴や展望ランチを楽しめるハイキングコースが整備されている。さらに、吉祥山へは新城市側からの登山ルートもある。豊橋市側からのルートに比較してあまり登られていないようだが、新城市側からのルートはより野性味あふれた登山が楽しめる。今回は、豊橋市側から1つ、新城市側からもう1つの2つのルートをご紹介しようと思う。
尾根伝いAコースで登山、Cコースで下山
豊橋市側から吉祥山へ登るルートはAコース、Bコース、Cコースの3本のルートがある。Aコースは吉祥山から南西へのびた尾根伝いに登るルートで最も良く登られているお勧めルートだ。登山口には駐車場とトイレ、休憩場が設けられており便利だ。ここではAコースを登り、山頂から吉祥天女の祠を経由しCコースで駐車場に戻ってくる半日ハイキングコースをご紹介する。
アプローチ
県道381号線を東進して石巻西川町吉祥の工業団地入口で左折し、すぐ右手の細道に入ると「吉祥山市民ふれあいの森」駐車場だ。駐車場には18台ほど止められるが、曜日や時間帯によっては満車となる可能性があることに留意しておこう。Bコース登山口にも駐車場スペースがあり、またCコース登山口へ至る遊歩道の手前、工業団地の最奥部までは車で入れるので確認しておくと良い。
Aコースでゆったりハイキング
休憩所の向かい側からAコース登山道に入る。コースはよく整備されており100mおきに距離を示す道標があるので参考にしながら登ることができる。またコース沿いには植生の説明板が多数設置されている。季節の花や樹木を楽しみながらゆったりと登ろう。
200m地点で送電鉄塔下に出て一旦開けるが再び林の中を行くと獣よけの柵が現れるので開閉して進む。人気のハイキングコースとはいえ防獣柵の内側は、いのししと遭遇する可能性があるので留意しておこう。今回、筆者も1頭見かけている。
500mで再び送電鉄塔下に出て南側の展望が開ける。700mと1200m過ぎでも鉄塔下を通過し、1600m手前でBコース登山道との分岐に到着する。山頂方面へとルートをとり、防火用水を過ぎたあたりから涼しげなヤマボウシの姿がちらほらと目立つ頃には汗がにじみ、最後の急登をのぼり詰めれば山頂に到着する。新城市側、豊橋市側ともに展望が効き、眺めは最高だ。ゆっくりと青空ランチにしよう。
Cコースで森林浴下山
下山は吉祥天女の祠を経由してCコースを下る。豊川を正面に見て足元に注意して急な丸太ステップの階段を下りる。ステップを下りきると山名の由来とも言われる吉祥天女の祠がある。祠周辺には小規模ながらスダジイの大木の群落が見られる。祠前からCコースに入る。
Cコースの登山道もよく整備されている。つづら折れの登山道を下るとやがてAコースへの分岐を過ぎ、作業小屋に到着する。さらに少し下ると生産の森の案内板前に出る。道標に従いCコースを辿れば左手から小沢が流れてくる。さらに下って右手からも小沢が流れてくるのでこれを渡渉する。やがて2つの沢が合流して小さな砂防堤上に出る。沢の右岸をそのまま下っていけばCコース起点の表示がある遊歩道入口に降り立つ。
遊歩道入口から下は林道吉祥山線を下る。奥の池手前の二股分岐に道標があるのでここを左に入る。防獣柵が現れるので開閉して柵の外に出て、柵沿いに杉林の小径を進めば工業団地脇の車道に出る。10分ほど車道を歩けばAコース登山口に戻ってくる。
大谷コースで登山、向山コースで下山
さて、吉祥山に登るには新城市側からも登ることができる。新城市のホームページには「吉祥山よくばり眺望コース」が紹介されている。このコース名称は実際の登山ルート中の道標に記載されているコースの名称を示しているわけではないので道標のコース名称と照らし合わせてご紹介したい。
今回ご紹介するルートは、同眺望コース図(以下コース図)に記載されている宇利川大谷橋の登山口をスタートし、コース図には記載のない少しワイルドな大谷コースから吉祥天女の祠に到着後、山頂を往復してコース図通りに下山するルートだ。新城市側のルートも道標はしっかり設置されているが、大谷コースについては現在入手可能なガイド図等の情報は少ないと思われる。地図の読図ができて現在位置が把握できないと入山は心許ないのでしっかりと下調べをしてから出かけよう。尚、山が深い分、いのししとの遭遇にはさらに注意する必要がある。
アプローチ
宇利川の大谷橋を渡った南側が登山口となっている。今回筆者は豊川の海倉橋下流右岸の河川敷に駐車したが大谷橋南側に駐車スペースがある。登山口周辺にトイレはない。登山口の北東800mほどに一鍬田公民館の戸外公衆トイレがあるので利用できる。一声かけて駐車もさせてもらえると助かるだろう。
大谷コースから吉祥天女の祠へ
ここからは、前出コース図をお手元に用意してご参照願いたい。宇利川の大谷橋を南へ渡った正面が登山口で右が大谷コース、左が向山コースとなっている。コース図にはこの現地道標に記載されているコース名称が表記されていないので道標が示す何コースを歩くことになるのか事前に確認しておこう。
登山口で大谷コースにルートをとり、バラスのまかれた杉木立の中の山道を行く。しばらく歩くと左手に「山の神の道」の道標が現れる。道標には吉祥山登山道入口とあるが、これには入らずに真っ直ぐ進む。
コース図に記載のある最初の「分かれ道右へ」は立木に吉祥山への黒い矢印看板がつけられている二股分岐だ。これを右へ進む。
コース図2つ目の「分かれ道右へ」(注:コース図には記載されていないが白い道標が立っている)で小さな沢を渡り、次の「白い道標」を真っ直ぐ進むとコース図「白い道標左へ」の地点で左林道コースと右大谷コースの分岐に出る。ただこの分岐には白い道標が見当たらないので注意が必要だ。
大谷コース詳細
上記分岐で右の大谷コースに進路をとる。ここから先、吉祥天女までの間は「コース図」に現れていないので地理院地図や登山アプリなども活用して現在位置を確認しながら登るようにしよう。
作業道の終点に角材の道標が立つ地点で道標にしたがって左へ進むと「吉祥山登山道入口大谷コース」の黒い小さな道標が現れる。ここから本格的な登りとなり、要所要所に道標があるので大谷コースを外さないように歩く。鉄塔下で「大谷林道きつねバイパス」との分岐を分け、つづいて「八名井林道終点・西尾根」との分岐を過ぎると左手に林道が接する。さらに山頂に向かって登り、「向山尾根へのバイパス」との分岐、「金沢・八名井へ(西尾根)」との分岐と過ぎればスダジイの大木が見えて吉祥天女の祠横に到着する。ベンチもあるので涼しい林の中でお昼にするのか、あと一登りして山頂で青空ランチにするのかお好み次第だ。
向山コース、林道コースで下山
山頂からは吉祥天女の祠まで一旦戻る。林道脇の道標から「向山コース(中腹P・大谷橋)」方面へ丸太のステップを下る。赤テープを巻き付けた立木に打ち付けられた道標が現れるので同じく「向山コース(中腹P・大谷橋)」方面へ進むと一旦林道に降り立つ。ベンチが二つある脇から再び林の中に入るとすぐ3点分岐の道標が現れるので向山コースを外れて「中腹門扉前Pへ」方向へ左に曲がる。10分ほどで緑色の門扉前に到着する。この地点がコース図でいう「登山道入口」にあたり、ここまで車で上がってこられる。
「登山道入口」から車道を下るとコース図の「林道入口」、左折してさらに下るとNTTの無線局に出る。コース図では「車道へ」となっている地点だ。ここにも道標が立っているので「きつねバイパス」方面へ進む。左からきつねバイパスが合流するのでそのまま直進すると吉祥山頂を示す白い道標が道路の右側、左側と現れるので山頂と逆方向に下ってゆけば「林道コース」と「大谷コース」の分岐点(コース図の「白い道標左へ」地点)に戻ってくる。あとは往路を戻れば大谷橋の登山口に到着する。
ゆったりのんびりハイクも野生動物の気配が強いちょっとワイルドなコースも楽しめる吉祥山。お好きなコースで楽しんでみよう。
管理人山行日 | 2024年5月3日 |
豊川河川敷発 | 9:42 |
豊川河川敷戻り | 14:33 |
管理人山行日 | 2024年4月26日 |
Aコース登山口発 | 9:15 |
Aコース登山口戻り | 12:50 |