岩古谷山は難しい山だ。
見るからに険しい岩壁の風貌とともにルート中にははしごや鎖場などが連続し東海自然歩道の難所の一つに数えられている。
一方でルートの選択によっては一時間と少しで山頂に立ててしまい、すばらしい眺望が楽しめるとあって登山者の人気が高い。
そんな岩古谷山だが和市登山口のほど近くにある大木、樹齢450年と言われるエドヒガン桜が今見頃を迎えている。
ヤマビルがまだ少ないこの時期は登山と合わせて桜の開花も楽しめるが、岩古谷山は常に総合力が試されることに変わりはない。
万全の準備で出かけたい。
今回の登山ルートと近況
和市登山口前の第2駐車場に車を止め、堤石峠を経て岩古谷山に登る。
登頂後は鞍掛山方面に東海自然歩道を辿り、びわくぼ峠から塩津登山口へと下りる。
塩津登山口からは野々瀬川沿いに舗装路を歩き、エドヒガン桜を愛でて第2駐車場に戻ってくる。
4月は登山の好機?ヤマビル、クマ、スリップには注意を
岩古谷山には「ヤマビル」に注意の看板があちらこちらに掲示されている。
ヒルは吸い付かれてもなかなか気がつかず出血も止まらない、痒みは引かないしとやっかいな存在だ。
夏場には相応の準備と覚悟をして出かけた方が良いだろう。
ショートスパッツや忌避剤などが有効だ。
登山中に立ち止まったときには足元の点検が欠かせない。
今回、筆者も注意しながら歩いていたが幸いに被害は受けなかった。
やっかい者のヒルとの遭遇が少ない時期は長くは続いてくれない。
ひと雨毎にだんだんと活動が活発になってくるであろう。
「クマ」の注意喚起もなされている。
また岩古谷山には、はしご、丸太のステップ、ワイヤーロープなどが各所に設置されていてスリップや転落には細心の注意が必要だ。
四肢を使って登ったり下りたりするため、滑り止めのついた手袋があると有用である。
そうこう考えてみると、厳冬期を除いてヒルやクマと遭遇する可能性が低く、エドヒガン桜にも出逢える季節となるとこの時期は岩古谷山登山の好機と思えるのである。

ヤマビルに注意
春の嵐が吹き荒れた岩古谷山頂
和市登山口へアプローチするには国道473号線を東進し荒尾口バス停を過ぎたら岩古谷トンネル手前で左折して和市場の集落へと入る。
左折箇所には岩古谷山と書かれた小さな標識が立てられている。
500mほど進めば左手に第1駐車場が現れる。
さらに80mほど進むと第2駐車に至る分岐があるので左折して第2駐車場まで上がる。

和市登山口第2駐車場
車を止めて舗装路を50mほど歩けばトイレのある岩古谷山登山口に到着する。
登山口には沢水が引かれているので下山後にも利用できて便利である。
駐車場は第1駐車場でも構わないができればトイレと水場が近い第2駐車場まで上がっておきたい。

和市登山口
登山道入口左手に入山者人数を確認するためのカウンターが設置されているので一つ押して出発しよう。
一つ目の道標(岩古谷山1.3km55分)と二つ目の道標(岩古谷山1.1km50分)を過ぎて小沢を渡れば十三曲がりの始まりだ。
二曲がりの道標、三曲がりの道標と順番に数えながらジグザグとつづら折りの登山路を20分ほど詰めると堤石峠に到着する。
ここで岩古谷山頂まではあと0.6km30分の距離だ。
この先から核心部が始まるのでベンチで一息入れよう。
ヒルに吸い付かれていないか足元のチェックもしておきたい。

堤石峠
丸太のステップを登っていくと正面に荒々しい岩古谷山の東壁が迫ってくる。
目を凝らすと絶壁の上端部に沿って登山道が続いていることが分かる。
丸太の階段、鉄ばしご、ロープなどでルートが確保されているが滑りやすいので足元をよく確認しながら一歩一歩慎重に登る。

鉄ばしご
やがてパノラマの展望が開け三ツ瀬明神山を正面に望む岩古谷城址鉤掛岩に到着する。
元亀2年(1571)武田軍の攻撃を受けて籠城した城兵が食料が尽きて苦戦する中で絶壁から長い綱をかけ先端の鉤によって兵糧を運び込んだことから鉤掛岩と呼ばれるようになったという伝説が伝わっている。

岩古谷城址鉤掛岩から三ツ瀬明神山を望む
展望を楽しみつつ堤石トンネルへの分岐点にある道標を過ぎると山頂だ。
ベンチがあるのでゆっくりしよう。
山頂の南側は吸い込まれるような展望台になっていて設楽の町並みが見渡せるので転落しないように気をつけて眺望を楽しんでみよう。

岩古谷山からの展望
さて、今回の青空ランチであるが景色がすばらしくていつまでも眺めていたい。
本当は山頂でゆっくりとお昼にしたいところである。
堤石トンネル方面に下山する計画であれば山頂でお昼にするのが良い。
最高の青空ランチが楽しめる。
しかし今回は道程が長く朝方に登山を開始してお昼にするにはまだ早い時間帯に山頂に到着している。
名残惜しいが鞍掛山方面へと尾根を下ることにする。
相変わらず空は快晴だが麓から吹き上がる風が強く春の嵐の様相になってきた。
御殿岩で陽だまり青空ランチ
今回の下山ルートはびわくぼ峠から塩津登山口ヘと下りるルートである。
このコースを取ると塩津登山口から車を置いた和市登山口まで間、長い距離を県道、国道と歩いて戻らねばならないのであまり歩いている人は多くないかもしれない。
パーティーで車を登山口に一台づつ置くか塩津温泉で一泊するという手もある。
所要時間を各自の行動計画に見積もっておく必要がある。
岩古谷山頂から鞍掛山方面へと鉄ばしごを下り20分ほど尾根を歩くと鞍掛山へ3.7km2時間50分の道標が現れる。
さらに5~6分で休憩ベンチのある707.7mピークになる。
国土地理院の地図ではここから荒尾の集落に下りる登山道があるが、この道は現在廃道になっているため登山時の計画に入れてはいけない。
杉林の中の尾根を下り登りと繰り返し15分ほどで少し開けて鉄塔下に出る。
さらに尾根上に配置された休憩ベンチNo.9、No.8と過ぎると荒尾集落への分岐に立つ道標(鞍掛山まで2.5km2時間)に到着する。

荒尾集落分岐
尾根の縦走はさらに続く。
鉄杭とワイヤーロープの張られた急な斜面を登り休憩ベンチNo.7を過ぎて尾根の斜面を左に回り込みながら再び登り上がったところで御殿岩に出る。
転落に注意しながら登って眼下の景色を眺めてみよう。
絶景の極みだが筆者山行時、春の嵐はほとんど台風並みの暴風となり岩から体を引き剥がされそうで早々に退散した。

御殿岩
尾根を挟んだ南側斜面は風下となり強風を遮ることができる。
御殿岩を下りて尾根を少し歩いた左手斜面にまったくそこだけ日の当たっている絶好の休憩ポイントがある。
今回の青空ランチは陽だまりランチで決定である。

御殿岩下の陽だまり
塩津登山道は要注意
陽だまり青空ランチでお腹を満たしエネルギーを充填したら尾根筋に戻る。
この先びわくぼ峠へは再びアップダウンを繰り返してゆく。
御殿岩からは35分程度で塩津温泉への分岐となるびわくぼ峠に到着する。
トイレもあるがかなり傷んでいる。

びわくぼ峠分岐
トイレ脇から塩津温泉方へと下るが、山中は浮き石が多く小枝が深く散り積もっていて歩きづらい。
登山道はあまり踏み固められておらず不明瞭で目印の赤テープも少ないため一旦ルートを外すと道に迷う可能性が高くなる。
地図とコンパスだけでは心許なくGPSが必携である。
登山アプリなどが役に立つのでこまめに地図上の登山路と自分のいる位置が大きく離れていないか確認しながら下るようにしよう。
塩津登山口までは40分ほどだ。
県道433号和市清崎線は工事通行止めが継続中
塩津登山口からは県道433号和市清崎線に出て国道473号線まで1時間半ほど歩く。
県道は昨年4月から荒尾と塩津の間で工事通行止めとなっており歩行者含めて町道45号上塩津線に迂回させられていた。
当初の予定であれば今年3月31日で工事期間終了のはずだったが現在も通行止めである。
工事事業者に確認したところ工事期間は令和7年3月末までに修正されるとのことである。
山行計画時には注意が必要である。
尚、迂回路の町道45号上塩津線は車は通行できるが道幅は狭い。

塩津荒尾間通行止め継続
「巨木に逢える町したら」満開のエドヒガン桜
設楽は「巨木に逢える町」だ。
大木、巨木が町内各地に自生している。
機会をとらえて見て回りたい。
和市のエドヒガンは幹回り根回りが4m以上もあり樹齢450年とも言われる大木だ。
実はこの桜、朝に車で和市登山口にアプローチする際、国道から見える。
遠目にあとで逢いに行くからとつぶやいてはるばる岩古谷山をぐるりと回ってきた。
根元に立ってみれば遠回りして逢いに来たかいがあったと言うものである。
圧巻の満開である。

エドヒガン桜
エドヒガンはもうしばらくの間人々の目を楽しませてくれることだろう。
厳しい登り、山頂からの素晴らしい眺望、苦労して山を下り、長い車道歩きの後に待っている大木との出逢い。
硬軟合わせて楽しめる岩古谷山。
出かけてみてはいかがでしょう。
管理人山行日 | 2024年4月1日 |
和市第2駐車場発 | 8:25 |
和市第2駐車場戻り | 16:05 |