渥美半島には太平洋や三河湾を展望できる低山が点在し、田原アルプスやあつみトレイルなど地元がPRする人気のハイキングコースがいくつもある。しかし市販のガイドブックや登山記録を含めて「弁当岩」や雨乞山の記述はあまり見かけない。弁当岩は雨乞山から南西方向にのびる稜線上にある275.3m三角点タコウドのすぐ東にある開けた岩場で眼前に渥美半島の最高峰大山327.9mをはじめ、太平洋や三重県の神島まで見渡せて文字通りハイキングのお弁当を広げるには絶好の休憩ポイントになっている。植生の中に小さな標識しかないので、知らずに通り過ぎている人も多いのではないだろうか。また雨乞山も標高はわずか237mであるにもかかわらず、山頂に立てば三河湾から太平洋まで360度の展望が楽しめる。雨乞山も大山の陰に隠れてかあまり話題に上がらないが素晴らしい眺望が得られ、こちらでお昼にしても良い。4月上旬頃までは渥美半島の岩尾根に自生するコバノミツバツツジが鮮やかに咲く時期でもありハイキングに出かけるには最高だ。
弁当岩で青空ランチを楽しむには
弁当岩や雨乞山で展望の青空ランチを楽しむためには3つほど事前に検討しておきたいことがある。一つ目はアプローチに使う交通手段をどうするか、二つ目は登山口と下山口をどこにするか、そして三つ目がトイレだ。交通手段は電車やバス、タクシーの乗り継ぎより自家用車に分があるが、自家用車を選択すると登山口と下山口は必然同じになるか、できるだけ近くになるようにしたい。駐車場の問題もある。またこの地域に行くのであれば渥美半島の最高峰である大山に是非登っておきたいが近辺の山中にトイレがなく頼りにできるのは泉福寺のトイレしかない。などなど、ルートの決定にはなかなか悩まされる。今回は、自家用車でアプローチして、あつみトンネル北口を起点にしたコースを二つ紹介しているが各人の都合に合わせてご参考にしていただければ幸いである。
1.自家用車であつみトンネル北口へアプローチ、大山登山
あつみトンネル北口を起点にして大山に登り、弁当岩で昼食にして下山路は椛(なぐさ)峠経由で椛口に下りるコース、もう一つのルートは大山、弁当岩とめぐり雨乞山へ縦走して雨乞山登山口に下山するコースである。椛口から車を置いたトンネル北口までの間、あるいは雨乞山登山口からトンネル北口の間は徒歩で車道を戻ることになる。これらのコースの場合車道歩きが長くなるのが欠点だ。
あつみトンネル北口を起点にする
あつみトンネルはトンネルの北口、南口ともに駐車スペースがあり、それぞれ大山への登山口があるが、南口の駐車スペースは狭く、北口から登る方が一般的だ。尚、駐車スペースを含めて大山周辺や椛峠までの山中にはトイレがない。大山のピストンだけであればあまり気にすることはないが、縦走するのであれば泉福寺までの距離や所要時間を確認しておいた方が良い。
大山登山ルートの現況
トンネル北口から大山へは駐車スペース入口の左手奥から登山道に入る。すぐに猪の防護柵が現れるので開け閉めしてシダの生える杉林の中を進む。2つ目の柵、3つ目の柵と過ぎると「大山くちなし岩20分」の道標が現れるので左に曲がる。5分ほどで「おうむ石と大山の分岐」に出るのでここは右へ行く。さらに10分ほどで「大山と臍岩の分岐」となり左に進めば右手からトンネル南口からの登山道が上がってくる。各分岐で進行方向を良く確認すれば問題はないであろう。
この先登山道はガレた歩きづらい急登となり左手に梔岩を過ぎてしばらく登るとひらけた草原に出る。春先の草丈はそれほどでもない。正面右奥に踏み跡を辿れば展望台のある大山に到着する。トンネル北口からは50分から1時間ほどである。展望台に登って一息入れよう。
2.椛峠から弁当岩へ登り椛口へ下山するコース
椛峠は大山方面からは弁当岩や雨乞山へ登る際の経由地であり、椛のシデコブシが自生する椛口へと下山する際にも通るコース中の要所となっている。また椛峠から泉福寺へは15分ほどで下ることができる。麓から泉福寺までは舗装はされていないが車で上がることが可能で駐車スペースとトイレもある。緊急の際はエスケープルートとして下山に使えるので覚えておこう。
大山から観音の腰掛け岩~椛峠~弁当岩~椛口へ下山
大山から椛峠に行くには一旦往路を戻る。草原に戻り往路の登山路を下るが梔岩周辺は落ち葉やガレた石で歩きづらくスリップに注意が必要だ。「大山と臍岩の分岐」に戻ったら臍岩に向かう。じきに猪防護柵を一つ通過しシダの多く茂る道を進むと臍岩に到着する。山頂からは35分から40分ほどだ。臍岩からは今下りてきた大山が見える。臍岩が「観音の腰掛け岩、椛峠方面」への分岐点になっているのでここで道標に従って右へ直角に曲がる。
臍岩から緩い下りを20分ほど行くと二股に分かれる地点に「観音の腰掛け岩」の道標が現れるのでここを右へ行く。このあたりは地表が濡れており滑りやすいので注意が必要だ。じきに「観音の腰掛岩5分、臍岩30分の分岐」に出るので猪防護柵を開け閉めして通る。腰掛岩はすぐだ。転落に注意して登ってみよう。パノラマが広がっている。
観音の腰掛岩からは暖湿地域の植物であるタイミンタチバナが自生する急登を10分ほど詰めると「椛峠と狼煙山の分岐」に出る。狼煙山はすぐそこなので立ち寄ってみよう。大山と観音の腰掛岩がよく見える。分岐に戻り椛峠へ向かう。ガレ石の多い下りと登りを繰り返し送電鉄塔の真下を過ぎれば椛峠に到着する。少し傷んだ道標が立っている。泉福寺と弁当岩を記す道標もそれぞれ立木に縛り付けてあるので方角を確認しよう。観音の腰掛岩から椛峠は30分ほど見ておけば良い。
椛峠から弁当岩を目指す。椛峠の道標の向かいに弁当岩が絵図で記された道標が立木に縛り付けてある。赤テープに向かって登りはじめるが、この先がコース一番の難所である。足元が悪いので慎重に行こう。急登を10分ほど詰めると笑之助平の分岐に出て泉福寺からの山道と出合う。道標が立っているが半分欠損しているため「雨乞山」の文字が読み取りにくい。雨乞山方面を確認してもう一登りする。あえぎあえぎ登れば稜線に出て「タコウドと雨乞山の分岐」となり一安心だ。
左に折れて3分ほど歩けば左手に大きな岩がごつごつと現れる。ウバメガシの中に分け入れば弁当岩のテラスに到着だ。大展望を満喫しながら自然のスカイレストランで青空ランチにしよう。
弁当岩を挟んで稜線上を西に行けば三角点のあるタコウド275.2m、さらにその先は「見晴岩と䕃凉寺の分岐」へと続いている。3月下旬から4月上旬にかけてはコバノミツバツツジと合わせて尾根歩きと景観を楽しめる。見晴岩では伊良湖方面や三河湾がより眼前近くに迫って眺望できる。尚、上記の分岐からはげんこつ岩方面への道が分かれており、道標には景観最高げんこつ岩とあるが現在では植生が育ち展望は得られない。省略しても良いだろう。
下山するには、「タコウドと雨乞山の分岐」まで戻り、足元に注意して椛峠までの急な斜面を慎重に下る。椛峠からはシデコブシが自生する椛口へと下る。椛峠から椛口へは15分ほどだ。登山口に下りる直前で斜面が崩れておりロープが張ってある。慎重に下ろう。4月はシデコブシのシーズンは過ぎてしまっているが少し覗いて車道に出たらトンネル北口に置いた車まで戻る。30分ほどの車道歩きとなる。
3.椛峠から泉福寺参拝~弁当岩~雨乞山へ縦走するコース
椛峠から泉福寺を参拝するコースである。椛峠で泉福寺方面への道標に従い西へ下る。ひろみち沢を横断してひらけた山道を約10分ほど下ると左から車道が上がって来るのに出合う。車道に出て駐車スペースとトイレが見えると泉福寺はすぐそこだ。
泉福寺から弁当岩~雨乞山~雨乞山登山口へ下山
泉福寺から弁当岩へ行くには駐車スペースの左奥が雨乞山への登山口となっているのでこれに入る。ここの道標も欠損しているが登山道は比較的ひらけているので心配はない。
10分ほどで前出笑之助平の「雨乞山と椛峠の分岐」に出る。あとは先ほどのコースと同様に「タコウドと雨乞山の分岐」を目指せば弁当岩までのルートは同じだ。「タコウドと雨乞山の分岐」を東に行けば達磨岩、物見山と景観スポットが続く。物見山からは一旦下って登り返すと爺々岩に着き、さらに登れば雨乞山に到着する。弁当岩から雨乞山までは50分ほど見ておけば良いだろう。雨乞山の展望も素晴らしい。パノラマを堪能しよう。
雨乞山からは一気に登山口まで下る。途中くちなし台、四等三角点がある岩場と過ぎ、30分ほどで伊川津揚水機場脇の登山口に到着する。雨乞山登山口からあつみトンネル北口までは45分から50分ほどの車道歩きとなるが、牛舎や広大な畑の風景を楽しみながら歩いて行こう。尚、雨乞山登山口付近には残念ながら路上駐車する以外に駐車スペースがない。車でアプローチして雨乞山登山口から雨乞山に登る場合は少し歩くが椛のシデコブシ奥に駐車スペースがあるのでこちらが候補となる。
*(注):ルート中で見られるコバノミツバツツジは雄しべの数や色合い、大きさなどが異なるものが幾種類も見られ、筆者には他種のミツバツツジとの区別が困難でしたので文中はコバノミツバツツジで統一しました。
管理人山行日 | 2024年4月10日 |
おおやまトンネル北駐車スペース発 | 9:05 |
おおやまトンネル北駐車スペース戻り | 15:35 |
管理人山行日 | 2024年4月13日 |
おおやまトンネル北駐車スペース発 | 8:05 |
おおやまトンネル北駐車スペース戻り | 15:06 |