童心でよじ登るサイコロ岩【鳳来寺山バリエーション岩稜】

鳳来寺山とサイコロ岩 愛知の山、自然
鳳来寺山とサイコロ岩

どこかパンチの効いた山に登りたい。

この年齢、この体力、こんな技量でも黙々とよじ登っていける山がいい。

鳳来寺山「サイコロ岩」

鳳来寺山バリエーションルートの岩稜上にある。

大丈夫、登れるという謙虚な自信と本当に?という微かな緊張感が心のなかで絶妙にバランスしている。

こういう気持ちのときはきっといい登山ができるはずだ。

下山後は重油の供給不足で休業に見舞われながらも再開してくれた温泉に立ち寄れれば最高だ。

童心に帰る鳳来寺山バリエーション岩稜とサイコロ岩

湯谷温泉の駐車場でスマホの登山アプリを起動して歩きはじめたが「養乙女橋」あたりで再度スマホを取り出すと現在地の表示が大きくずれている。

何度かスマホの画面を指でトントンとやってみても直らない。

橋の西側あたりが今回の登山ルートの取り付きであることはアプリの「みんなの軌跡」からわかっていたが、現在地を表示できないのはどうにも心もとない。

すこし移動してみれば直るかもしれないと思い、宇連川沿いに狭い県道を歩いているうちにたち岩まできてしまった。

宇連川とたち岩

宇連川とたち岩

それにしても宇連川のいい眺めだ。

板敷川とも呼ばれているのもなるほどと頷ける岩石と水と緑が織りなす渓谷美。

GPSが効いていたらきっと立ち寄ってみることもなかった景色だった。

ついていたのか、ついていなかったのかわからないが、結局GPSは直らない。

あきらめて「養乙女踏切」までもどる。

踏切の表示を見て「養乙女」は「ようとめ」と読むのだと知った。

何かいわれがありそうだ、あとで調べてみないと。

壊れたGPSが教えてくれたもの

GPSが使えずに今日一日歩けるかと不安になったが、取り付きさえ大きく外さなければ尾根にあがれるだろう。

尾根に乗ればあとは尾根伝いに岩稜帯をゆけばいい。

地図とコンパスで山を歩いていた年数の方がスマホを持ち歩くようになった期間よりうんと長い。

大丈夫と思いながらも何だろうこの不安は。

登山アプリやGPSが登山者にもたらしてくれた恩恵は計り知れないが、一方でハイテク機器が地図読みの力を磨く機会を減らしていることは否めないだろう。

スマホがなければ歩けない登山なんてリードにつながれて散歩させられているようで自分の好きな登山じゃない。

感じた不安はいつの間にか無意識、習慣的にスマホに頼るようになっていたことの証だろう。

山では熊や山猿のように地図やコンパスすら無用で歩けることの方が最後は強い。

便利な機器に頼ってばかりいるとだんだんと人の野生本能が鈍り危険予知や自然への対処能力が低下していることに気がつかなくなる。

スマホよ壊れてくれてありがとう。

全身の五感センサーをONにして入山する。

養乙女踏切を渡って入山する

養乙女踏切を渡って入山する

養乙女踏切を正面に渡ると小道はすぐに二股に分かれていて左手の地面際には「湯谷園地」と小さな道標が打ち付けてある。

湯谷園地はたち岩の方角だが、こっちも湯谷園地?

どんな園地なのだろうと気になったが早めに406mピークの南陵に取り付きたいので右へ行く。

辺りを見回しても登山口の表示は見当たらないが「みんなの軌跡」では飯田線の線路脇か沢の左岸辺りから尾根に取り付いていたはずだ。

適当なところで沢に下り、流れをまたいで踏み跡をさがす。

小さなえん堤付近の木立の中に色あせた目印テープを見つけた。

よし、ここから行こう。

湯谷富士を上へ、上へとよじ登る

サイコロ岩へ登るにはまずは湯谷富士を経由せねばならない。

標高は406mながらまさしく小さな富士山のよう。

田ノ島踏切付近から遠望した湯谷富士はとても形が整って見えて思わずカメラを向けた。

湯谷富士

湯谷富士

地元の方から声をかけていただき、朝の挨拶を交わすことができた。

いいところにお住まいですね。

そんな数十分前の光景が脳裏に浮かんだのは見ると登るは大違いだったからだ。

懐に踏み入ればすぐさま目の前の斜面との格闘が始まった。

防虫スプレーはたっぷり振ってきたがマダニはごめんだな。

目印から踏み跡を辿る

目印から踏み跡を辿る

踏み跡は何とかわかる程度には残っている。

現在地の高度がわからないのはしょうがないが、入山地点の沢からピークまでの標高差は300mだ。

とにかく北へ向かって上へ上へと登ればピークから派生する南陵の尾根に乗れるはずだ。

しばらくブッシュをかき分けていると”ド、ド、ド、ドッ”と左手奥で何かが落ちたような大きな鈍い音がした。

落石?動物か?耳をすませて身構えたがもう何も聞こえない。

いいぞ、いいぞ、こういうのがいいんだ。

視覚、聴覚、嗅覚と五感がビンビンと研ぎ澄まされてくる。

どきどきとゾクゾクが潜む貸し切りのワンダーランド。

立ち休憩を一本いれながら、一時間ほどで宇連川と能登瀬の町を見下ろす尾根にでた。

よし尾根に乗った、ルートは間違いない。

待ってなよサイコロ岩。

宇連川と能登瀬の町をのぞむ

宇連川と能登瀬の町をのぞむ

童心をかき立てる「サイコロ岩」

前方木立のすき間にオッ、あれかなという具合に岩場がのぞいてサイコロ岩が眼前に姿をあらわした。

いいねえ、いいねえ。

これは登りたくなるでしょ!

しばらく岩肌をじ~となめるように観察し、登攀ラインをイメージしてみる。

中間のバンドまでは問題なく上がれそうだ。

垂壁の左肩から抜けるところが核心部だな。

ヘルメットのあごひもを締め直し、ザックのベルトもキュッと引いて深呼吸。

よし、行くか。

いざ、サイコロ岩へ!

いざ、サイコロ岩へ!

ひさしぶりに童心に帰ってよじ登る。

左肩を乗越し、方向を変えて右上へそろり、もう一歩、二歩と足を進める。

最後はサイコロ岩にタッチしてほっと一息。

ちょっと足の運びがぎこちなかったな。

やっぱり歳だな。

でも大満足だ。

岩壁の後ろに隠れていた宇連山、三ツ瀬明神山の景色もおかずにしてここで青空ランチにしていこう。

三ツ瀬明神山を遠望する

三ツ瀬明神山を遠望する

好天に恵まれ、春の岩稜はすこし暑くなってきた。

立ち去り難いがおにぎりをひとつ食べ残し、行者越経由で下山だ。

管理人山行日 2026年5月16日
湯谷温泉駐車場発 7:47
湯谷温泉駐車場戻り 15:54

 

最後まで読んでくださった読者さまへ

この記事は登山ルートの紹介を意図したものではなく、筆者の童心の発露、ひとりごとを書きとめたものです。

おでかけの際は信頼できる経験者のガイドを受けるなどご自身の責任で安全を確保しておでかけください。

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