篠島は佐久島、日間賀島とともに愛知三島と称される離島の一つで風光明媚な三河湾の景観を構成する歴史ある自然豊かな島です。
しらすやトラフグなど新鮮な海の幸や伊勢神宮とも関わりの深い名所旧跡、釣りや海水浴などのレジャースポットも多くとても一日では味わい尽くせません。
篠島には三河湾、伊勢湾、太平洋も遠望できる絶景スポットがあちらこちらに点在していますので景色を楽しみながら島内をめぐるのもおすすめです。
様々な楽しみ方ができる篠島ですが、この記事ではハイキングに行くならと題してぜひ訪れてみたい景勝地や見どころをよくばりに楽しむ歩き方を紹介してみたいと思います。
絶景の島 篠島へのアクセス
篠島へは師崎、河和、伊良湖からの定期高速船や師崎からのカーフェリーなどでアクセスできます。
>>名鉄海上観光船のホームページで運航便を確認できます。
河和港からの定期高速船は師崎からの便に比較して港までの交通手段の選択や駐車場確保のしやすさ、トータル交通費用や乗船時間をより長く楽しめることなども考え合わせると船旅が好きな方には筆者おすすめの選択肢です。
また人数がそろえば海上タクシーが割安になる場合もあります。
片名港や一色港からもアプローチできたり、行き帰りの時間に融通がききます。
数社運行していますので検討してみると良いでしょう。
青空ランチアドバイス
篠島は集落の多い北部や中部と山林が多く残る南部とでは地形が大きく異なっています。
今回のハイキングで歩く西山周遊コースは島の南部を周回する山道が主体のハイキングコースになっています。
まちなかの散策やビーチレジャーの延長のつもりで、西山周遊コースに出かけると痛い目に会いますのでハイキング相応の準備が必要です。
また筆者は今回11月上旬と中旬にも歩いていますが山中ではこの時期には意外なほど虫やヤブ蚊も多かったです。
靴や服装をはじめ防虫対策やハイキングの基本的な準備はしっかりと行って出かけましょう。
篠島ハイキングは海岸めぐりで「西山周遊コース」へ
篠島を歩く際には篠島観光協会のイラストマップや各種パンフレットに記載されたガイド図などがよくできていて参考になります。
マップやパンフレットは協会のホームページや篠島港の「島の駅SHINOJIMA」などで入手できてハイキングコースもいくつか紹介されているのですが初見で篠島を歩く場合、イラストマップだけを頼りに細い道が入り組んだ路地や山の中を歩くには少々心許ないところです。
そこでこの記事では効率よく島内をめぐるルートと見どころを徹底的に道案内しています。
イラストマップなどと合わせてお出かけ前にぜひ参考になさってください。
島の駅SHINOJIMA
篠島港に到着したらまず港の玄関口である「島の駅SHINOJIMA」に立ち寄って周辺情報を仕入れましょう。
特に冬期にかけては強風で帰りの船便が減便されていたり欠航になったりすることもありますので天候の変化や運行情報には注意しておくことが必要です。
島の伝統中手島おんべ鯛調製所
ハイキングのスタートは島の駅の東側に出て南北に500mものびる長い直線道路から歩きはじめます。
道路の北側の端に見える小山が中手島で伊勢神宮に奉納する「おんべ鯛」を作る神聖な場所です。
神宮の御料地になっていて許可無く立ち入りはできないところですので予め留意しておきましょう。
おんべ鯛の奉納は毎年6月、10月、12月と3回にわけて行われていますが、毎年決った時期に決まった大きさの鯛を決まった数だけ干鯛にして納めるという大変な仕事を伴う伝統行事です。
不漁のときも時化の日も雨の日もあるでしょうにこの伝統行事は1000年以上も守り続けられています。
中手島は南知多町の町の木であるウバメガシが茂り擬木のフェンスで囲われています。
フェンスに沿って舗装路を東側の海岸へと回ります。
海岸へ回るとフェンスの門扉脇から入口に建つ鳥居が見えますが、笠木の断面が五角形になっていて神宮特有のシンプルな神明系鳥居であることが見てとれます。
海岸沿いには鯛の加工場があって築見島や日間賀島、佐久島を遠望できる三河湾の景観が広がっています。
北山公園から望む大展望
中手島から海岸を東へ突き当たりまで進むと岩礁帯になっていてあたりは小磯島と呼ばれています。
海岸伝いに南へ進むと白い手すりのある階段が小山の中に続いています。
階段を上って赤い手すりのたいこ橋を渡ると會津八一の歌碑が建つ北山公園に到着します。
海の景色がひと味変わり、ベンチもあるので一服するのによいところです。
高台の公園からは東側には遠く渥美半島を、また反対の西側には師崎方面も見わたすことができてここでも素晴らしい景色を楽しむことができます。
皇子が膝、水神天宮、松寿寺と島の歴史をめぐる
皇子が膝
一服したら北山公園から南側へ降りる階段がありますのでこれを下るとトイレのある広場の脇に出ます。
広場の東側が海岸になっていますのでふたたび海岸へ向かって進み、突き当たったら右へ折れて歩道を歩きます。
カーブミラーのある三叉路で右手の車道に入ると数十メートルほど先に第八番の島弘法と皇子が膝の碑が建っています。
皇子が膝の碑は後醍醐天皇の皇子義良(のりなが)親王(後の後村上天皇1328~1368)が暴風雨にあって篠島に滞留された折りに漁師たちが漁に出るたび、帰って来るたびに浜にひざまづいて御座所に向かって拝礼したことを伝えるものです。
水神天宮(城山水神天狗)
碑から海岸に戻って水神天宮へ向かいます。
海岸伝いに歩道を先へ進むと第十三番の島弘法の背後から車道が一本下りてきています。
水神天宮へはこの車道を上がって行くのがわかりやすくておすすめです。
車道を上りきると廃校となった小学校がありその脇を突き当たりまで進むと神社への登り口があります。
このあたりは小高い丘になっていて現在では城山とよばれていますが、11世紀末の源平時代に室賀左近太夫秋季が築いたとされる篠島城跡で義良親王が篠島に漂着した折りに村人たちが荒廃していた篠島城を修理して親王の行在所としたと伝わります。
城址はその後現在までに水神天狗、琴平神社などの石碑や社がいくつも建ち並ぶようになり独特な雰囲気の空間になっています。
松寿寺
水神天宮の登り口に戻って廃校のジャングルジムの裏手から天文十一年(1542)建立の古刹松寿寺に下りることができます。
下り口に立つと前浜の美しい砂浜が眼前に広がって大変景色の良いところです。
お寺は四国直伝弘法第四十七番霊場、南知多三十三観音の番外札所になっています。
長大な前浜サンサンビーチを歩き神明神社、八王子社へ参拝
前浜(ないば)のサンサンビーチを歩きながら1200年以上も伊勢神宮と深いつながりを有する神明神社と海上守護の神様として厚く信仰される八王子社を参拝します。
立派な社殿は伊勢神宮の式年遷宮で篠島に下賜されよみがえったものです。
女宮である神明神社と男宮である八王子社は縁結びの神様としても信仰をあつめます。
神宮の頃には目にすることもできなかった宝殿を神社の本殿として参拝できる両社は篠島ハイキングでは外せない必見のスポットですね。
神明神社は集落の中にありますが、松寿寺からサンサンビーチ沿いに歩けば横断歩道手前に神明神社の方角を示す道標がありますのですぐにわかります。
八王子社もサンサンビーチの時計台手前まで来れば右手に鳥居が見えますので道に迷うところはありません。
八王子社からビーチの時計台に戻ればトイレもあって美しい砂浜を眺めながら休憩できます。
この先からいよいよ山歩きのハイキングとなりますので一服していきましょう。
名古屋城築城採石地跡を見学
800m続くビーチの西の端近くまで来ると、ぎふや旅館の塀際に名古屋城築城の採石地を示す案内板が立っています。
ほとんどの採石地が海岸沿いにある中で「弁財採石地」は内陸にあるので目の前に見学することができます。
歩きやすく足場が組まれていますので城郭ファンのみならず訪れてみると興味深いと思います。
ぎふや旅館と悠々庵との間の路地を奥へ進み「採石地跡」と書かれた黄色い看板を辿れば往復10分ほどの距離です。
西山周遊コースで太一岬 キラキラ展望台へハイキング
ビーチをさらに突き当たりまで進むといよいよ「西山周遊コース」の入口です。
ここからは山道ですのでしっかりとした靴で歩かなければいけません。
西山周遊コースの看板のあるところから左へ海岸伝いの小径に入ります。
島弘法がいたる所に現れる山林の中を20分ほど登ると二股になりますので左手に入れば太一岬のキラキラ展望台に到着します。
展望台に上がれば伊良湖岬や神島、伊勢神宮方面まで見渡せる絶景が広がっています。
万葉の丘 歌碑公園で青空ランチ
太一岬からも絶景ポイントは続きます。
鯨浜
西山周遊コースに戻ってさらに10分ほど先へ進むと目の前が明るくひらけ青い海と白い砂浜が眼前に迫ります。
鯨浜のビーチで沖に松島を望むことができます。
万葉の丘 歌碑公園
今回のハイキングの青空ランチは万葉の丘歌碑公園の展望台が断然お勧めです。
鯨浜から西山周遊コースをさらに5分ほど歩けば正面から舗装路が上がってきます。
この地点で二股になっていますので小さなお社の横を左手に入れば歌碑公園に到着します。
展望台に上がれば日本夕日百選にも選ばれている絵に描いたような絶景が広がります。
ゆっくりと青空ランチにしましょう。
筆者おすすめの青空ランチスタイルはこちらの記事で紹介しています。
清正の枕石
展望台で夕日の沈む松島も見たいところですが、遅くなるので次回宿泊に来るときまでお預けです。
お昼を食べたら加藤清正の枕石へ向かいます。
舗装路を先へ進むとじきに篠島小中学校の前に出ます。
篠島小学校の門柱の手前から海岸へ下りる小径が左手に分岐しています。
ここを下りてゆけば潮や波が低いときは海岸伝いに枕石まで行けるのですが小学校脇を通って尾根の上から枕石へ下り立つルートの方が確実です。
イラストマップなどでは小学校の建屋を縫うようなルートで行くようになっていますが校庭を通らずとも行けます。
学校に立ち入って不審者と間違えられないように注意したいところです。
小学校の門柱だけ通らせてもらいすぐ左手の防球ネットの外側を真っ直ぐ進んで突き当たりの枕木の階段を登れば枕石への道標が立っています。
10分ほど山中を進むと分岐になるところで道標が地面に落ちていますがここで左手に進みます。
枕木の階段を海岸へと下りれば枕石に到着します。
付近には矢穴を掘った穴が残る巨石も見ることができます。
鯨浜や松島、師崎方面も望めてすばらしい景観になっています。
富士山より高い!? 熊ノ山
海の次は往路を引き返して小中学校まで戻り篠島で最高峰の熊ノ山をめざします。
中学校の正門前から北へ進むと浅間神社の前に出ます。
ここで左手を見上げると小山の上に無線塔が見えます。
無線塔の方角へ擁壁伝いに車道を上がり、旅館高峰荘の間を通って熊ノ山へ向かいます。
熊ノ山はなんと富士山よりも高く(といっても佐久島にある富士山(ふじやま)のことですが)標高は50mほどあります。
ハイカーとしてはぜひ踏んでみたい篠島の最高地点ですね。
舗装路から右へ曲がってNTTの無線塔下へ進むと熊ノ山の道標があり奥へ入ると小さなお社があります。
知多四国霊場札所をめぐり帝井へ
義良親王が篠島に滞留された折りに掘られた井泉、帝井へ向かいます。
熊ノ山から舗装路に戻り点在する民家の間をまっすぐ北上しながら下っていきます。
居酒屋「きこり」が建つ交差点で左折すると島弘法めぐりの道標が見えますのでここから階段を下ります。
続いて知多四国霊場三十八番の黄色い表示が現れますのでこれに沿って左へ進むと第三十八番正法禅寺、さらに番外札所の西方寺に至ります。
帝井はその少し先にあります。
水は現在も澄んでおり驚かされます。
医徳院と照浜篠島漁港
篠島ハイキングも終盤です。
医徳院と御本尊
知多四国霊場第三十九番札所医徳院をめざします。
医徳院の本堂は伊勢神宮西方殿の御用材を下賜され改築したもので島内最古の木造建物になっています。
境内には保育園が併設されていて運動場横の植生がみごとです。
今回は花の季節ではありませんでしたが、つつじやあじさいなどの花の時期にも訪れてみたくなります。
医徳院の御本尊は室町時代に照浜の海中に夜中光るものがあるといって漁師が網を入れると薬師如来であったといういわれのある尊像です。
ハイキングの締めくくりに漁港に下りて当時の様子に想像を膨らませてみましょう。
愛知県有数の漁業基地篠島漁港
県下有数の漁業基地である篠島漁港に下りるには医徳院の階段を下りて「←かえり道」、続いて「←タクシー乗場」の案内板をたどればスムーズに下りて来られます。
漁港に下りたら岸壁伝いに歩けば島の駅に帰ってきます。
これで篠島の主な見どころに立ち寄り、島をほぼ一周して帰ってきました。
篠島は細い路地が入り組んでいて迷子になりそうですが、事前に下調べをして予備知識を仕入れておけば効率よくめぐることができます。
古い歴史と豊かな自然にあふれる魅力たっぷりの篠島へぜひハイキングにお出かけください。
管理人探訪日 | 2024年11月12日 |
島の駅発 | 8:10 |
島の駅戻り | 15:00 |
展望を楽しむハイキングをこちらの記事でも紹介しています。