長篠の戦いで敗走した武田勝頼が落ち延びた武節城。稲武の里では4月3日まで旧暦のひな祭りが開催されている。道の駅どんぐりの里いなぶから見上げる武節城址は三河、信濃、美濃の国境に位置する要地にあったことからいくども合戦があった。
今回は、武節城址と当時国境の情勢を武節城に伝達する上で重要な役割を果たしていた峯山砦狼煙場址(押山)を歩いてみる。
武節城址から押山古道で峯山砦狼煙場址をゆく
稲武地区と恵那を結ぶ国道257号線界わいは戦国の歴史に触れることのできる史跡や自然の見どころが満載だ。中馬街道の脇街道は人馬行き交う国盗街道であったが、自動車社会の現代は国道257号線と153号線がまさにハイカーやツーリストにとっての国盗街道だ。
車を上手に使えば一日で史跡巡り、絶景のハイキング、下山後の温泉と存分に楽しめてしまう。この時期はちょっと寒いが武節城址を散策したら抜群の展望を誇る峯山砦狼煙場址へも足を伸ばしてみよう。
道の駅どんぐりの里いなぶから武節城址へ
武節城址へは車で道の駅どんぐりの里へアプローチしてここを拠点にする。3月下旬、稲武地域に春の訪れはゆっくりと進んではいるがまだまだ寒い。峯山狼煙場址(押山:標高773.3m)へのハイキングもあるのでしっかりとした防寒対策と足元の準備が必要だ。
どんぐりの里のすぐ東、国道153号線の城山トンネルの真上が武節城址である。武節城址へ行くには北側登り口と国道を挟んで反対側の南側登り口の2カ所から入れるが、北側登り口から入った方が登りやすい。どんぐりの里の観光案内所に各種パンフレットがあるので参考にしよう。
北側登り口から舗装路を進めば左手に三の丸、二の丸と現れて本丸に至る。本丸の背後は高い土塁になっている。櫓台であり現在では八幡神社が建つ。かつては天守に相当するような大きな櫓が建てられていたと想像されている。
本丸にはあっさりと登れてしまい、山城ファンにはちょっと物足りないかもしれない。そんな向きには本丸から南側登り口方面へと下ればがらりと様相が違った山城感が楽しめる。
勝頼は長篠の戦いで敗走した先の田峯城では入城すること叶わず、やむなく段戸山を越えて命からがら支城の武節城まで一晩二日でたどり着いたという。地図で眺めてみれば相当な距離である。武節城で差し出されたという梅酢湯はさぞかし五臓六腑にしみわたる一杯だったことであろう。
汗をかきかき山頂まで登って青空ランチ休憩で飲むお茶一杯のうまさに通じるものがある。勝頼が疲労困憊で到着した450年近くも昔の雰囲気を想像しながらじっくりと散策して道の駅の駐車場に戻ろう。
押山古道で峯山砦狼煙場址へ
戦国時代、狼煙で近在の山城に情報を伝達する中継地であった砦は現代では抜群の景色を楽しむことができる展望ランチスポットだ。
峯山砦狼煙場址(押山)は秋から初冬にかけて見られる雲海の景色で名高い。押山は雲海の季節ばかりではなく御嶽信仰の山として四季折々に頂上からの景色がすばらしい。麓からわずかの登山で山頂に立てるので武節城址を散策したら合わせて訪れてみたい山だ。
押山へのアプローチは稲武カントリークラブ側から登山口付近まで車で登るルートもあるが、今回は257号線側からアプローチして押山古道を使って頂上をめざす。こちらの方が所要時間は長くなるが、それでも小一時間で山頂に立てる。
登山口は国道257号線から県道356号線に入り、押山バス停から市道峯山線を1.6kmほど南下したところにある。登山口の道路脇があき畑になっているので入口をふさがないように車は道路左側に寄せて駐車すると良い。
押山古道はかつては子供の通学ルートだったとのことで運動靴で登れないこともないが、靴はしっかりとしたものを履いて行くべきである。また筆者の登山時点(3月22日)、山中の日陰や山頂には霜柱や雪が残っている。
登山口には押山への立て札が2本立っていてそれぞれ別方向を示しているが、押山古道は右へと山道を上がって行く方だ。10分ほどで送電鉄塔が現れるので鉄塔下を右に巻き、杉木立の中、つづら折りの急登を詰めていく。要所要所には地元の方が掲げてくれた道標があるので忠実に辿ってゆけば良い。
さらに30分ほど登っていくと木立が開けて左手から砂利道が上がって来るところで炭焼き小屋の上に出る。
砂利道に下りたらそのまま進めば頂上まであと190mの登山口分岐に到着する。
ここから杉林に入り、擬木の土留めステップを10分も登れば頂上だ。
山頂からは北に恵那山、山並みの奥には小さく真っ白な雪を戴いた御嶽山が顔をのぞかせ、西を見渡せば遠くに猿投山とすばらしい眺望を楽しめる。そして眼下には戦国の時代、国境の情勢を武節城に伝える重要な役割を担っていた押山城、川手城方面と歴史の舞台も見下ろせる。ここが要地であったことが良くわかる。
さて、山頂には立派なベンチもあってここで青空ランチとしたいところだが雪の残るこの季節の山頂はまだ吹き抜ける風が冷たい。周囲に風をよける広いスペースは少ないが寒ければ日なたの斜面に避難して腰を下ろすと良いだろう。
尚、登山道一帯は私有地である。押山は地元の方たちが本当に大切にしていてハイカーを歓迎してくれていることが伝わってくる山だ。マナーを守って楽しく登りたい。眺望を楽しんだら往路を下山する。
どんぐりの湯とどんぐり横丁
下山したら車で再びどんぐりの里いなぶに戻る。冷えた体を温泉で暖めてから帰りたい。どんぐりの湯は木曜日休館(祝祭日の場合は翌日)なので山行日が該当しないか確認してから出かけたい。また臨時休館もあり得るので注意しよう。臨時休館日はインスタグラムで配信されている。どんぐり横丁も12月から3月の間は木曜日が定休だ。
史跡めぐり、ハイキングの絶景、温泉、おみやげ購入と楽しんでいなぶのドライブ国盗り街道を攻め落とすには事前の確認と計画が重要だ。
管理人山行日 | 2024年3月22日 |