設楽町段戸湖に隣接する段戸裏谷原生林はブナ、モミ、ツガなどの巨木が生育する愛知県内最大級の原生林です。
「きららの森」と通称されている原生林には東海自然歩道を含む散策路が整備され、四季を通じてハイキングや散策、バードウォッチングなど自然に親しむことができます。
今回は、下界の暑い夏を逃れて一足早く、秋を迎えにきららの森原生林にでかけてみます。
段戸湖周辺の標高は約900mほどですので平野部より5℃~7℃程度は低い気温が期待できそうです。
・きららの森を縦横に歩いて森林浴を満喫してみたい方
・原生林散策路のようすを下調べしてからおでかけしたい方
・できるだけ涼しく、たっぷりと木陰の散策を楽しみながら寧比曽岳にも登りたい方
木陰の散策を満喫する原生林と寧比曽岳ハイキング
きららの森へでかけて段戸湖周辺だけを散策するならそれほど心配はいりませんがしっかりとした靴を履いていくのがおすすめです。
原生林には散策路が整備されていますが、湿地帯や登山道もあるのでハイキングの足作りと装備ででかけるのが安心です。
段戸湖湖畔の駐車場まで車でアプローチすることができます。
筆者は今回真夏の午前7時過ぎに現地に到着しましたが、外気温は21℃でした。
下界は連日猛暑日が続いていましたので車を降りるとてもさわやかな気候に感じられます。
できるかな?一筆書きできららの森散策コースをめぐる
段戸裏谷原生林を歩くなら事前に設楽町の公式観光サイトで「段戸裏谷原生林きららの森散策図」を入手して参照しておきましょう。
みどころの大木や施設などがイラストで描かれていて所要時間も記載されているので参考になります。
ただ散策図は北を下に作成されているため地形図と照らし合わせて確認しておくと混乱がありません。
下に筆者が実際に歩いたルートを地形図に記してありますので参考にしてみてください。
地形の高低感や距離感など実際のようすがつかめると思います。
ここからは散策図に記載されている各コース名称に照らして近況を紹介します。
尚、コース名称は現地の実際のコースには表示されていません。
散策図に記されている名称ですのであらかじめご留意ください。

きららの森散策コース(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)
一筆書きで縦横に原生林を歩いてみる
今回は前述の散策図に記載されている各コースの内、一本(ゆるい尾根道コース)を除いて全部のコースを歩いてみました。
ほぼ一筆書きで歩けますので原生林を存分に堪能してみたい方にはおすすめの歩き方です。
スタートは段戸湖駐車場のトイレ脇から林道にはいります。
すぐに左手から東海自然歩道が合流してきますのでまずこの自然歩道を辿ってゆきます。

「多くの木が観察できる平坦なコース」入口
この道は「多くの木が観察できる平坦なコース」となっていて5分ほどで県道365号田峯三都橋線に突きあたります。
舗装された県道に上がってさらに5分ほど南へあるくと今度は右手に道標が現れますのでここから「自然観察路▶」にはいれば「斜面と湿地の多いコース」につづくルートです。

「自然観察路」にはいる
道迷いには注意「斜面と湿地の多いコース」
「斜面と湿地の多いコース」を歩く場合は一カ所道迷いに注意が必要です。
自然観察路を右手に沢、左手に山腹を見ながらゆるやかに巻きながらのぼってゆくと丸太づくりの橋を二本渡ります。
その先で沢を渡ってコース入口の道標からは10分ほど歩いた辺りで切り株に青テープが巻かれた写真の地点にでますが、ここで道はまっすぐつづく踏み跡と右手につづく踏み跡のT字分岐になっています。
まっすぐ行きたくなるところですが、右手のリョウブの木がある方向へ曲がります。
木には白い名札が付いているのでわかります。
まっすぐつづく踏み跡はやがて975mピークの方角に消えてしまいます。
前掲の地形図に記載してありますので参照してください。
コンパスや地図を持っていないと道迷いしやすいので注意が必要です。

青テープとリョウブの木の間の踏み跡を辿る
T字分岐で右に曲がって進むと傾いた赤松が一本立つ尾根に上がって松の裏手側奥に青テープが見つかります。
青テープを辿りながら斜面を下ってゆくと木道のある湿地帯まで下りてきます。
現地のコースは道案内に乏しいですがその分原生林を歩くたのしさをたっぷりと味わえます。
「尾根道を歩くコース」と「谷間を歩くコース」
「斜面と湿地の多いコース」を下りてくると「尾根道を歩くコース」と「気持ちの良い空間」につづく道を分ける下の写真の分岐にでます。

東海自然歩道道標分岐
この分岐で段戸湖方面につづく丸太の階段を登ると「尾根道を歩くコース」です。
コースを進むと小ピークを経由して段戸湖方面に下る道が二手に分かれます。
どちらを辿ってもよいですが左手の道を選択すれば休憩所広場に下りる途中に東屋もありますので涼しく休憩できます。

東屋休憩所(奥)、左へ下ると休憩所広場
東屋から下ると休憩所広場横の林道まで下りてきますが、あとで寧比曽岳にも向かうというのに出発地点の駐車場からはいくらも前進していません。
急ぐ道程でもなければこんな歩き方もあっても良いのではないでしょうか。
「谷間を歩くコース」と「ゆるやかな斜面と尾根を歩くコース」
休憩所広場横を通って林道をすすみ、前方に見える黄色い車止めゲートのすこし手前でモミの大木脇から「谷間を歩くコース」にはいります。
「◀段戸原生林0.6km 10分」の道標が建っているのでわかります。

段戸裏谷原生林にはいる
沢筋をあるくと森のみどりがほんとうに鮮やかです。
これからは紅葉の季節もますますたのしみになります。

森のみどりが鮮やか
上ばかり見上げて歩いていたら危うく踏みつけるところでした。
いました、大きいのが。
筆者は詳しくありませんが段戸湖周辺に生息するモリアオガエルだと思います。
湖の周辺にいるものとばかり思っていましたがこんな沢筋にもいるのですね。

モリアオガエル?
コースをすすむと大きなひのき脇に「湿地」と「五六橋」方面を分ける道標が建つ地点にでます。
ここから右手の「ゆるやかな斜面と尾根を歩くコース」にはいりますが、左の湿地帯方面の自然観察路が「気持ちの良い空間」で先ほど歩いてきた「尾根道を歩くコース」との分岐点につながっています。
時間があれば往復ピストンして歩いてみると方向感覚もよくつかめますのでおすすめです。

「湿地」「五六橋」分岐
道標にもどったら五六橋方面へ進みます。
「ゆるやかな斜面と尾根を歩くコース」は散策路の高低差も少なく、若木、大木、倒木と現れて原生林の息吹や生命のサイクルを感じながら気持ちよく歩くことができます。

背比べ?
「谷や尾根を歩く変化の多いコース」と「大木やめずらしい植物の多いコース」
「ゆるやかな斜面と尾根を歩くコース」は「西川林道」と「五六橋」を分ける分岐まで来ると終了です。

「西川林道」「五六橋」分岐
ここで五六橋方面へ辿ると「ゆるい尾根道コース」を通って段戸湖につながる椹尾分水林道に突き当たりますが、せっかくですので西川林道方面へ回り道してあと二つ散策コースをめぐって五六橋に下ることにします。
「谷や尾根を歩く変化の多いコース」は沢筋に下りてゆくあたりの足元がすこし悪くなりますが原生林を縦横に歩いてきた充足感でいっぱいになります。

林道はもうすぐ
「大木やめずらしい植物の多いコース」となっている林道に下りたら最後はみどりのプロムナードを五六橋めざして北上し原生林ツアーを締めくくります。
これから紅葉の時期はどんな表情を見せてくれるでしょうか。

五六橋へ向かう
ピークハントも外せない!木陰を歩いて好展望の寧比曽岳へ
きららの森まできたら登山好きにはピークハントも外せません。
付近には出来山や豊田市の最高峰、寧比曽岳があります。
今回は五六橋から富士見峠を経由して裏谷ルートで寧比曽岳を往復ピストンしてみます。
今の時期はそれなりに汗はかきますが、ほとんど木陰となる登山道をさわやかな風に吹かれながら好展望のピークをめざすことができます。

好展望を得られる寧比曽岳山頂
熊出没情報
はじめに熊の出没情報について近況を記しておかねばなりません。
段戸湖の観光案内所には8月1日に富士見峠周辺で熊の目撃情報があったことがPRされています。
各自、自分のできる準備や工夫は最大限に行ってでかけたいところです。
登山ルート概況と所要時間の確認
東海自然歩道で段戸裏谷から寧比曽岳へ登る際の登山口は五六橋のすぐ西にあるトイレ脇にあります。
ルートは全般に現況でよく踏まれているので山頂まで比較的安心して登ることができます。
登山道には登山口と山頂を10分割する東海自然歩道の道標が設置されていて登山口から山頂までは5.4km/2時間20分、一方山頂から段戸裏谷までの下りは7.5km/2時間と案内されています。
山頂から段戸湖までなら7km/1時間50分となります。
道標の所要時間は登りは平均的なところだと思いますが、下りはすこしきつめのコースタイムになっている印象です。
自身の足の速さときららの森散策の所要時間も勘案して出発、帰着時間を計画するのがおすすめです。

裏谷登山ルート(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)
登山ルートの要所、休憩ポイント、見どころ
登山口
きららの森を散策した終着点の五六橋の道標から富士見峠方面に数分歩けばトイレのある登山口に到着です。
この先富士見峠にもトイレがありますが利用が推奨されていないのでここで済ませていきます。

裏谷ルート登山口
分岐
「寧比曽岳3.8km/1:40」の道標まで来ると右手の斜面上に林道が迫り、その先で登山道と合流しています。
寧比曽岳へは林道を横切って赤テープを巻いてある立木の間の細道に入ります。

右手の細道に入る
休憩ベンチ(展望あり)「寧比曽岳まで1.2km/30分」
分岐からさらに二つ道標を過ぎると丸太で組まれた橋横に水場を通過します。
水場の先で休憩ベンチ(No.31)ともう一つ道標を過ぎると市街地方面の展望が効く休憩ベンチ(No.32)があります。

休憩ベンチ(No.32)
尾根のコルにあり、風がよく通って気持ちよく休憩できます。
ここから富士見峠まで一登りするので一息入れるのに良いところです。
尚、この地点は出来山方面につづく尾根道が合流していますので下山時に間違わないように注意が必要です。

下山は往路(左)を戻る
富士見峠と反射板
休憩ベンチ(No.32)から20~25分ほどがんばって登ると富士見峠です。
周囲が伐採され木株のベンチが多数配置されていて休憩できます。
富士見峠はかつての眺望は得られませんが、トイレ横からすぐ先にある中電パワーグリッドの反射板まで寄り道してみるのがおすすめです。
反射板まえが草地の広場になっていて恵那山方面の景色がよいところです。

反射板前からの眺望
寧比曽岳山頂
寧比曽岳山頂からは県内でも屈指の眺望が得られます。
筆者来訪時にはアキアカネが乱舞しツバメも飛びかっていました。
晴れた山頂の外気温は25℃、日陰の東屋の中は24℃と涼しく文句のつけようがない快適さです。
ゆっくりと青空ランチをたのしんでから往路を下山することにします。
原生林散策と木陰を歩く寧比曽岳ハイキング登山、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

寧比曽岳山頂からの眺望
管理人探訪日 | 2025年8月8日 |
段戸湖駐車場発 | 7:35 |
段戸湖駐車場戻り | 16:10 |
寧比曽岳についてはこちらの記事で伊勢神峠ルートでのハイキングも紹介しています。
