鳳来湖の宇連ダムとならんで豊川用水のもう一つの水がめとなっている朝霧湖大島ダム。
鍵掛山は大島ダムの北東に位置し湖面からは340mほどの高低差がある標高約588mの低山である。
鍵掛山へは大島ダムの建設に伴い、集落から移転した方々に感謝する碑が建つ広い駐車スペースを起点に周回してくることができる。
右回りも左回りも登られているが所要時間に大差はなく、休憩を入れても3~4時間ほどの半日登山だ。
標高と所要時間からは一見、手軽な低山ハイキングの印象を受けるが、鍵掛山は決して侮れない。
鍵掛山には両手両足をつかった急斜面の登り降りやルートファインディング、岩稜、露岩帯の通過などといった登はんのエッセンスがぎゅっと凝縮されている。

感謝の碑から望む朝霧湖
侮れない小さな横綱級の低山、鍵掛山を登はんする
県道519号線を南下して名号トンネル、大島トンネルと抜けて大島ダム移転者感謝の碑がある駐車スペースまで車で入る。
現在、名号トンネル手前のY字路に通行止めの案内板が立っているが、大島ダムや駐車スペースまでは問題なく通行できるので直進して進入すればよい。
今回は駐車スペースから右回りで鍵掛山へ登って周回してくるルートの近況を確認してみる。

鍵掛山登はんルート(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)
合わせて下山後には朝霧湖の南の岩崖にかかる県内最長といわれる百間滝に出かけてみる。
朝霧湖周辺にはほうき滝、百間滝というふたつの大きな滝と愛知県の代表的な湧水である「百間滝の湧き水」があって鍵掛山登山後にぜひ訪れてみたい見どころだ。
鍵掛山には「登はん」ということばがふさわしい
感謝の碑がある駐車スペースから車道を横切り向かい側の林道唐沢線に入り登山口へアプローチする。
駐車スペース周辺にトイレはないので事前にすませておく。

林道から登山口へ
右回りで行くか、左回りで行くか
林道は入口からして倒木や落ち枝が散乱し先が案じられる様子になっている。
しばらく林道を歩くと右手上方から両側に手すりのある急な坂が降りてきている。

右回り下山口、左回り登山口
ここが鍵掛山に左回り反時計回りで登る際の登山口、また右回り時計回りで降りてきた際の下山口になる。
今回は右回りで登るので通り過ぎて林道をもう少し奥へと進む。
初見で鍵掛山に登るなら右回りで登山した方がよい。
これは傾斜のある露岩帯の通過がひとつのハイライトとなるためで左回りにすると露岩帯の通過は下りとなり、下降開始の足の踏み出しや下降ラインの見極めなどの点でより緊張感を強いられた通過になるからである。
また露岩帯を登りで通過した方がその後振り返って見下ろす朝霧湖の景色がこの上なく感動的だ。
右回りを先に経験してみよう。
ただ右回りにするにしても岩登りや岩稜登はんの経験が少ないと通過は最初から困難なはなしだ。
必ず信頼できる経験豊かな人と同行し安全確保の手段についても練習や確認をしておこう。
登山初級者だけでの入山は控えたい。
右回りルートの登山口
右回りの登山口は林道を朝霧湖の最北部まで進み右手からがれ沢が降りてきている正面にあるガードレールの脇にある。
付近には赤い目印テープと小さな札がぶら下がっているので登山口であることがわかる。
ここから取り付くが踏みあとは西側斜面へと続いており一旦山頂方向には背を向けるかたちで登り始める。

登山口
鍵掛山を「登はん」する
登山道はいきなり両手両足をつかった急斜面の登りとなるのでトレッキングポールなどはしまっておいた方がよい。
またこの時期は防寒も兼ね備えた滑りにくくてごみのつきにくい手袋があると助かる。
ルートはハイキングという様相にはほど遠く岩稜帯を木の枝や根っこ、岩をつかみながら這い上がっていく感じだ。
自らルートを確認し目の前の障害物をひとつひとつクリアしながら高度をあげていく。
鍵掛山には「登はん」ということばがふさわしく低山といえどハイカーにとっては横綱級である。
核心部の露岩帯と朝霧湖の絶景
登山道にはテープなどの目印が各所に付されて残っているが自分でもルートを判断しながら詰め上がってゆく。
15分ほどで登山口のがれ沢の西側に沿っているやせた尾根上にあがる。
さらに10分ほど進むと大岩に突きあたるところにトラロープが張ってある。

スリップに注意して右へ回り込む
スリップに注意しながらロープに沿って右手へ回り込み、もう一本ロープを頼りに岩を乗っ越す。
ザックが重いと結構苦労するところだ。
さらに進んで周囲の立木が減り、視界が広がると空に向かって傾斜した大きな露岩帯が現れる。

核心部の露岩斜面
この岩、名前もつけられているようだが一般にはあまり認知されているとも思えないのでここで名称を記すのは控えたい。
まず下から岩の先端までを眺めてみる。
岩の表面は凹凸があるので濡れたり積雪していなければ足裏の摩擦はよく効く。
「あそこの小さなバンドで少し左へ動いてあとは真っ直ぐかな・・・」と登るラインを想定してみる。
「上部で傾斜が一段増しているところがあるけどよく見えないのでひとまずあの木の生えているところまでだな・・・」
今ではインターネットが発達しているのでたくさんの山行記録に接することができて、この岩場もほとんどの人は緊張を強いられつつもノーロープや四つんばいで通過していることを大方の人は知っている。
そして自分もいけるだろうと思って出かける。
でも予断を持たず初見で岩場を見上げたとき、あるいは見下ろしたときに自分は通過できるという確信をどこまで持てるだろうか。
登れない人、降りられない人は必ずいる、そしてそれは自分ではないのか。
確信に理由のない「いけるだろう」は危険である。
パーティに初級者がいる場合や十分な確信が持てないときには安全確保したり、してもらったりすることをためらってはいけない。
登るラインを見定めてゆっくりと登り始め、ときどき振り返りながら最上部へと抜けてみる。
岩の上から見下ろせば登はんしてきたラインと朝霧湖が絶景だ。

登はんラインと朝霧湖を見下ろす
鍵掛山山頂へ
ひとしきり景色を堪能してふたたび登り始める。
急登はまだ続き、やがて杉や松などが多い尾根道になる。
左手から登山道が合流する地点に立ち木に巻かれた黄色い目印テープがあるが、破損していてマジックで書かれた文字を判読できない。
自分で方角をよく確認して右手東に進路をとる。
10分ほど進み山頂への最後の分岐になるところにも黄テープが立木に巻かれている。
左に曲がって山頂を目指すが下山につかう尾根道は今登ってきた道の右手後方へ枝分かれしている。
この分岐点は山頂から真っ直ぐ降りてくると方向を外しやすいのでよく確認しておく。
分岐を左に折れ、左手の立木の隙間に三ツ瀬明神山や宇連山などがちらちらと見え隠れし始めるとあと少しで鍵掛山山頂に到着する。

鍵掛山山頂と三ツ瀬明神山(奥)
山頂は北から風が吹きつけて少し寒いが北方、西方の展望がきく。
お昼には大分早いが景色もおかずに一枚着込んで青空ランチにする。
今回はインスタントのトマトスープにソーセージと残り物のやさいを煮込んでスープジャーに詰めてきた。
すぐに食べられて体も温まり後片付けも簡単。
今日は誰もあがってこないようだ。
ゆっくりとひと休み。
下山路
下山路は前述の分岐点で間違えなければ大丈夫。
立木に巻かれた黄テープに書かれている×印の方向へは進まないように注意する。
往路と復路の山道は高低差のあるV字形状に合流しているので分岐点となっていることが少しわかりにくい。

左へ下る
降り口であることが確認できたら今度は登りとは一転、急な斜面をひたすら下る。
50分ほどで朝、往路で見送った手すりのある下山口に降りてくる。
登山後は朝霧湖畔を周遊し必見の百間滝へ
鍵掛山から下山して半日で帰ってしまうのはもったいない。
朝霧湖周辺にはほうき滝、百間滝という必見の滝や百間滝の湧き水という湧水の名所がある。
またサイクリングが好きな人にとっては湖を周回する道路は車の通行も少なく景色を楽しみながらサイクリングできるとあってパラダイスのような車道である。
筆者は今回朝霧湖園地(南岸公園)に車を停めて車に積んでおいた折りたたみ自転車で周遊しているがサイクリングをやらない人でも見どころは歩ける範囲にあるので車を園地に置いてハイキングしてもよいし、展望台や東屋もある開放感抜群の園地でお弁当を広げてもよい。
他にも大島ダムの見学など色々とサブプランを検討してみると楽しい。

朝霧湖園地より大島ダムを望む
朝霧湖周辺の見どころ
ほうき滝
大島川にかかる二川橋のたもとからほうき滝に降りることができる。
電柱のワイヤー脇から踏みあとを辿って滝へ降りるが急斜面である。
百間滝と違って踏みあとは遊歩道になっているわけではないので足元は悪い。

ほうき滝降り口
一般にはおすすめできない下り道だが鍵掛山を降りてきたような人であれば数段容易、登山靴なら注意しながら降りてゆくことができるだろう。
滝はエメラルドグリーンの滝つぼが深く澄み美しい。

ほうき滝
百間滝の湧き水
百間滝のすぐ北、車道脇に湧水の水汲み場がある。
道端に車を停めて遠方から水を汲みに来ている人もいる。

百間滝の湧き水
県下最長、必見の百間滝
水汲み場から車道を少し南へ下ると百間滝への降り口がある。
擬木の階段が整備されているので10分ほど下れば滝下まで降りることができて休憩所も配されている。
昨年、スズメバチの襲撃で被害にあった人がいて一旦立ち入り制限されていたが現在では通行解除されている。
新城市のホームページに最新情報がPRされているが、出かけるならハチの活動が活発になる前がよさそうである。

百間滝
百間滝は滝頭にあるポットホールも悠久の歴史が感じられてとても興味深い。

百間滝のポットホール
帰りにふたたび湧水の水汲み場に立ち寄り、喉を潤して駐車場へ戻る。
青い空にパンチの効いた登はん、美しい湖畔の風景、大滝、そして恵みの水と楽しませてくれた鍵掛山と朝霧湖。
どうぞ細心の準備で行ってらっしゃい!
管理人探訪日 | 2025年2月27日 |
感謝の碑駐車スペース発 | 8:33 |
朝霧湖園地駐車場戻り | 14:25 |
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