豊橋市東部の町、石巻町と嵩山町に二つの「蛇穴」がある。
一つは石巻山登山道の途中にある「石巻の蛇穴」で入口径が約60cm、奥行きは約13mと小さな蛇穴だ。
もう一つの「嵩山の蛇穴」は奥行きが70mほどもあり内部は立って歩くことができる大きな洞窟になっている。
嵩山の蛇穴は観光地というわけではないため、内部は真っ暗闇で洞窟の中を歩くにはヘッドライトや懐中電灯が必要になる。
今年の干支の名がつく山に登りたいなと探していて目にとまったのが石巻山から自然歩道をつないで嵩山の蛇穴まで足をのばすルート。
ちょっと遠いかな。
往復すると自分の足では8、9時間はかかりそうだ。
石巻山登山後に嵩山の蛇穴だけ車で回ろうかなと逡巡してしまう。
でもやっぱり歩きたいな。
歩けた時間と距離は健康のバロメーター。
ええい、歩いてみるか!とでかけた巳年の干支ハイクは期待通りの光り輝く空と海、そして漆黒の空間がひろがっていた。

石巻山山頂で朝日を迎える
見どころ満載!石巻山から嵩山の蛇穴へ干支ハイク
愛知県の豊橋市と静岡県の浜松市、湖西市との境界には弓張山地に沿って長大な豊橋自然歩道が走っている。
稜線上の豊橋自然歩道本線には山麓からいくつも支線となる自然歩道が合流していて愛知県側からも静岡県側からも比較的手軽に展望のよい低山や小ピークにでかけることができる。
石巻山は豊橋自然歩道からは少し西に外れるが石巻観光路と石巻巡回遊歩道で豊橋自然歩道本線に接続している。
一方、嵩山の蛇穴は豊橋自然歩道の支線となる嵩山自然歩道の山腹にあるが豊橋自然歩道の割岩(富士見岩)と大知波峠を経由すれば石巻山とルートがつながる。
今回は石巻神社(山上社)西の石巻山展望台駐車場を起点に大蛇伝説のある石巻山に登り、そのあとに石巻観光路を辿って大知波峠へと歩いてみる。
大知波峠からは割岩(富士見岩)を経由して豊橋自然歩道を北上し、大山浅間社から嵩山自然歩道を下って嵩山の蛇穴へと向かってみる。
豊橋自然歩道については豊橋市石巻自然科学資料館の「石巻山自然観察路マップ」や豊橋市観光プロモーション課の「豊橋自然歩道ガイドブック」が役に立つ。
石巻山の大展望と開放感抜群!大知波峠廃寺跡
格式高い石巻神社
朝、意気込んで出かけてきたため石巻山の駐車場には夜が明けきらないうちに着いてしまった。
それでもヘッドライトをつけてランニングに出かける人たちのグループがいてびっくり。
準備体操をしていると空が白んできて周囲を見渡せるようになった。
さあ、出発。
ガードレールのある坂道を登って石巻山自然歩道に入ると石巻神社の一の鳥居下にでる。
石巻神社へは鳥居からいきなりの階段だ。
階段の途中で石巻自然科学資料館へ続く道と登山道が枝分かれするが先にお参りを済ませる。
石巻神社の創建ははっきりしておらず孝安天皇の時代とも推古天皇の時代とも言われ、古くから崇敬を集める三河でも格式の高い神社で豊橋市で唯一の式台社である。
拝殿前に進むと狛犬の足元などにたくさんの小石が積まれている。

石巻神社(小石がたくさん積まれている)
しまった!麓から一つ拾ってくるんだった。
石巻山には本宮山と背比べをしたというたのしい民話があって、負けた石巻山に小石を一つ運んでくれば御利益があるとか山に楽に登れるなどといわれている。
御利益は半減したかな。
石巻の蛇穴から石巻山へ
手水舎の前まで戻り、左へ折れてふたたび石巻山自然歩道に入る。
その先の道標で山頂へ続く道は奥の院を経由する道と二手に分かれているため登りと下りでルートを使い分けてみる。
ひとまず左に折れてしばらく登ると今回の目的地の一つ「石巻の蛇穴」に到着する。
しかし入口が小さ過ぎて這いつくばってまで中へ入っていく勇気は出ない。
穴は奥の院の岸壁につながっているらしいが中へ入って確かめた人はすごいなあ。
のぞき込むだけにして石巻山へ向かう。

石巻の蛇穴
蛇穴の先へ進むとダイダラボッチの足跡や大天狗、小天狗の岩などこの地方の民話や天狗伝説が残る見どころが現れる。
山頂へは正面に岩峰が現れる手前にある道標から左へ巻き上がりながら鎖場、さらに手すりのある階段と登ってゆく。
岩場を慎重に登れば石巻山山頂に到着である。

石巻山山頂への登り
山頂へあがって視界がひらけると山肌や木々がモルゲンロートに染まって美しい。
太陽が東の稜線から顔を出すちょうどいいタイミングで登頂できた。
三河湾や朝日のあたり始めた豊橋の市街地、ダイダラボッチが股にかけたという本宮山など360度の展望が広がっている。

石巻山からの展望
ひとしきり景観を堪能して下山にかかる。
奥の院と白蛇伝説
分岐から奥の院へと回ってみる。
奥の院には湧水がたまったこのしろ池と呼ばれる小さな池があり不動堂が建つ。
水の涸れないこのしろ池の水は洞窟から湧出している霊泉とされ神様の使いである白蛇から授かったとする伝説がある。
巨大な石灰岩の岩崖が緑色岩と層をなして不動堂の上に覆いかぶさっているようすは石巻自然科学資料館のパネル資料に石巻山と弓張山地のおいたちとして詳しく説明されている。

奥の院不動堂
同資料館は9時開館、16時30分閉館なので朝の行動が早い場合は下山後に立ち寄ることができる。
謎多い平安時代の山寺の跡「大知波峠廃寺跡」
石巻神社の鳥居まで階段を下りて戻り石巻観光路を東へと歩き大知波峠をめざす。
観光路は平坦な歩きやすい林道になっている。
40分ほど歩くと網フェンスの車両止めゲートがある二股分岐にでる。

石巻巡回遊歩道への分岐
フェンスの奥が石巻巡回遊歩道なのでフェンス横から奥へと入る。
右手へ続く観光路ももう少し先からは遊歩道となり豊橋自然歩道本線に接続しているので復路は右手から下りてこよう。
巡回遊歩道に入ると足元はよいが結構きついだらだらの登り坂がつづく。
25分ほどかかって大知波峠に到着。
大知波峠は11世紀末に衰退したといわれる廃寺の史跡になっていて浜名湖を見渡せる開放感あふれる抜群の展望がひろがっている。
北風の風裏になる陽だまりもあちらこちらに得られるので史跡を探訪しながらゆっくりできる。
太陽と今切の海が光り輝いてまぶしい。
しばらくここで大休憩。

大知波峠廃寺跡からの展望
青空の割岩(富士見岩)から漆黒の洞窟 嵩山の蛇穴へ
大知波峠で少しゆっくりしすぎてしまった。
豊橋自然歩道本線を割岩(富士見岩)へと向かう。
割岩は富士見岩!
大知波峠からは稜線を辿って30分ほどでその名の通りの割岩(富士見岩)に到着する。
富士見岩も大知波峠に劣らず眺めがよい。
遠く富士山や南アルプス、太平洋まで見渡せる。

富士見岩から望む
青空ランチにするにはまだ早すぎだが朝が早かったのでお腹がすいてきた。
大知波峠で休憩したばかりだったがこの先はあまり展望は期待できない。
誰もいない富士見岩で今回は青空ブランチ休憩ということにしよう。
(朝食も食べてきたけど・・・)
岩陰はぽかぽか陽気で青空が最高だ。

割岩
漆黒の洞窟 嵩山の蛇穴
嵩山の蛇穴は蛇穴だけ訪れるのであれば362号線からアプローチすれば近い。
下調べには豊橋市教育委員会、豊橋市文化財センター発行の歴史散策ガイドが役に立つ。
自分自身の当初の計画では富士見岩から蛇穴を往復するには3時間ほどかかるとみた。
あさ早起きしてきたかいがあってまだ10時前。
大丈夫、十分行けそうだ。
富士見岩から豊橋自然歩道本線を北上する。
15分ほどで長彦への分岐を左に分けると急な下りになる。
さらに10分ほどで「ホ17」番の道標が立つ嵩山自然歩道との合流地点にでる。
頭浅間の大山社が目と鼻の先だが帰路で立ち寄ることにして先に蛇穴へと下る。
道標に沿って自然歩道を30分ほど下れば今回二つ目の目的地「嵩山の蛇穴」に到着だ。

嵩山の蛇穴
蛇穴は縄文草創期の洞窟遺跡で中には自由に入ることができる。
石巻山の蛇穴にはとても入ることはできなかったが、ここで嵩山の蛇穴に入らず帰るわけにはいかない。
ヘッドライトを装着していざ突入。
入口だけ狭いが身をかがめて中へ入ると立ち上がることができる。
中は涼しいと思いきや湿度が高くて蒸している。
夏場とはまた違うのだろう。
真っ暗闇をヘッドライトの光を頼りにひと通りどんづまりまで歩いて引き返す。
出口のあかりが見えてきてほっとする。
へんなものが出てこなくてよかったあ!
縄文人はビバークの達人、とても敵わないなと知る。

出口が見えてほっとする
頭、腹、足、身体の守り神 嵩山の浅間神社
洞窟を後にして嵩山の浅間神社を訪れてみる。
嵩山の浅間神社は奈良時代中ごろ駿河富士浅間神社より勧請されたと伝えられ、もともと大山社(頭浅間)、原川社(腹浅間)、富士社(足浅間)の三社からなっていたそうだ。
後に頭浅間の祭神、大山祇命が原川社に合祀され二社三神を浅間様と呼び身体の守り神として崇められている。
蛇穴からの帰路、腹浅間にも立ち寄ってから頭浅間の道標分岐に戻ってみよう。
大山祇命の娘、木花咲耶姫命を祀る腹浅間には樹齢100年を超すタブノキがあって見どころだ。

タブノキの大木
嵩山自然歩道から豊橋自然歩道に合流し、今度は頭浅間に立ち寄ってみる。
神社は自然歩道合流地点の道標から本坂峠方面へ歩けばすぐだ。
腹浅間にも頭浅間にもトイレがあってハイカーにはありがたい。
足浅間だけ立ち寄らなかったのがちょっと心残りだが、再訪の目標ができたのでよしとしよう。
さあ、下山。
石巻自然科学資料館の閉館時刻までには十分下山できそうだ。
もう一度割岩と大知波峠で青い空と光る海を堪能して巳年の干支ハイクを締めくくろう。
管理人探訪日 | 2025年2月14日 |
石巻山展望台駐車場発 | 6:25 |
石巻山展望台駐車場戻り | 16:20 |