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おばれ岩が傾いたとのニュースに思い立って始めた御在所岳登山と湯の山温泉めぐり。
下山後に温泉を楽しむことにして一回目は裏登山道を、二回目は一ノ谷新道を歩いた。
三回目の今回は「表登山道」を登って「武平峠道」で下山してみる。
一回目と二回目の下山にはロープウエイを利用したが今回は使わない計画だ。
「表登山道」の見どころのひとつは登山口下にある御嶽信仰の講社碑と落差70mを誇る東多古知谷大滝「百間滝」の存在であろう。
だが表登山道は裏登山道や中登山道に比べると登山者にはあまり人気がないようだ。
見どころであるはずの百間滝も登山道からは樹間ごしに遠望できるだけであまり関心を持たれていないのかもしれない。
自分自身も御在所岳には幾度も通ったはずなのに思い返してみても表登山道を歩いた記憶がない。
しかし表登山道はいみじくも「表」と呼ばれるようになった登山道である。
なぜ表なのか。
いまになって神社と百間滝の存在がどうしても気になる。
百間滝は「蒼滝」、「潜戸の滝」とならんで湯の山温泉を流れる三滝川の由来となっている大滝である。
しかも表登山道をはさんで東多古知谷とは反対の西多古知谷にはもう一本落差50mの西多古知谷大滝がかかっている。
百間滝と西多古知谷大滝は御在所岳表登山道の東西の谷にかかる横綱瀑布なのである。
表登山道にじっくりと向き合ってみることにした。

登山道には御嶽信仰先達の霊神碑などが並ぶ
・表登山道は御在所嶽御嶽神社登山道
・表登山道はなぜ「表」?「百間滝」、「西多古知谷大滝」は信仰の滝!?
・ケーブルカーの復旧が嬉しい、楽しい!湯の山温泉希望荘「自助の湯」
御在所岳 表登山道で百間滝と西多古知谷大滝に迫る
東多古知谷の百間滝も西多古知谷大滝も表登山道から遠目に望むことはできるが多くの登山者は長く立ち止まってまで観望してはいまい。
また西多古知谷大滝は国道477号(旧鈴鹿スカイライン)上からも見えるがどちらの滝も行くとなれば沢登りの準備と装備で入渓して谷を遡行するのが一般的と思われる。
しかしあいにく沢登りの装備も技術もなくなってしまって久しい。
足を濡らさずにアプローチするなら表登山道から谷へ下るしかないがそんなルートは聞いたことがない。
やっぱり歩いては無理か。
あきらめかけたがどうしても大滝を見上げてみたい。
数日間地形図とにらめっこしながら谷の遡行記録などを漁っていたら参考になる記録が目にとまった。
ひょっとしたら行けるかも。
大滝への憧れがふつふつと大きくなってきた。

表登山道(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)
御在所岳表登山道口へのアプローチ
表登山道を登るのに好適な駐車場はいくつか候補があるが、武平峠道で下山してくることを考えて国道477号の武平峠駐車場に車を停める。
国道が冬期閉鎖になるまでは便利に利用できる駐車場だ。
駐車場にはトイレもあるがしばらく前から女性用トイレは工事中になっている。

武平峠駐車場
登山口へは国道477号を下ってもよいが駐車場のガードレールの切れ目から山道に下りることができる。
登山口は国道に接する形で標高違いに東西に離れて二ヶ所ある。
山頂へは西側の登山口から登れば近いが御嶽神社の鳥居や講社碑が東側の登山口のさらに下方にあるため鳥居をくぐってから登山したい。
武平峠駐車場から山道に下りて向かえば車とすれ違わず神社の鳥居から表登山道を歩きはじめることができる。
表登山道と御在所嶽御嶽神社
鈴鹿スカイラインが開通し現在では国道が登山道をまたぐような形になってしまっているが百間滝橋の下流に「御在所嶽御嶽神社登山道」の石標と鳥居が建っている。
御在所「嶽」とされていることからも御嶽信仰との関わりがうかがわれる。
石標には大正十一年十一月と刻まれているから1922年のことで百年以上も昔になる。
鳥居の方は文字が風化して読みづらくなっているが明治四十四年(1911)十一月建之のようである。
付近には御在所岳開山の僧覺順や御嶽信仰の先達覺明行者、普寛行者の霊神碑などが建っている。
御在所岳に北谷山小屋が建設され、藤内壁のルート開拓が盛んに行われていた時期は1930年代後半というからそれよりもずっと以前から信者達はこの道を登っていたわけだ。
そして登山道を進めば東西の谷には二本の大滝がかかる。
これはもう百間滝も西多古知谷大滝も行者、信者の畏敬を集めていた行場や信仰の滝に違いないと思った。
「表道」、「表登山道」の呼称は後年に定着したものだろうが表道は御在所岳の表と呼ばれるにふさわしい道なのである。

表登山道(御嶽信仰先達の霊神碑が並ぶ)
筆者は今回表登山道から西多古知谷大滝と百間滝へ下っているが一般道を外れるためルートの詳述までは控えておきたいと思う。
本記事ごときを読んで不用意に滝へ下ると転落や登り返し困難、道迷いなど危険が口を開けて待っている。
滝を訪れる場合は十分なルート研究と準備を徹底して出かけるべきだ。
二つの登山口
神社の鳥居をくぐり、百間滝橋の下から国道に上がると表登山道の東側の登山口になっている。

表登山道口
登山口の右手には大きな石組みのえん堤が見える。
定礎板を読むと「百間滝谷川第2ダム」とあり東多古知谷の百間滝谷川と言うんだといまさらながら知った。
登山道に入りしばらく進むと大きな岩の表面に赤い右矢印がペイントされた地点に来た。

目印岩
ここでルートは岩の右側からトラロープに沿って左方に上がってゆくのだが、赤矢印のせいで右手にまっすぐ進む人が多いのだろう。
右手にも踏み跡がついている。
少し覗いてみるとすぐに右側が切れ落ちた深い谷間になっていて先へ進めない。
百間滝はくの字に曲がった谷のもう少し奥にあるので残念ながら様子を伺うことはできない。
赤矢印に戻ってトラロープ伝いに登山道を上がるとふたたび国道に出合った。
ここが西側の登山口になっている。

表登山道口
百間滝見晴台
登山道を進むと10分と歩かずに水音が大きくなり右手樹間に百間滝が見え隠れしていることに気づいた。
少し歩いては立ち止まって腰をかがめたりして滝を見通してみるが全貌までは見ることができない。

百間滝が見えた
ときどき振り返れば鎌ヶ岳もピラミダルな姿を現して「百間滝見晴台」に到着した。

鎌ヶ岳
晴天に恵まれて景色もよいが、百間滝は遠すぎてこれでサヨナラするのはやはり未練が残る。
滝までの距離感と方角を脳裏に焼き付けてまずは西の横綱、西多古知谷大滝をめざすことにする。
西多古知谷大滝
西多古知谷大滝へは沢登りの記録などを参照すると国道沿いから入渓して沢を詰めてアプローチしている。
落差は50mの直瀑で国道からも滝の落口から上部にかけての姿を見上げることができる。
表登山道からは百間滝見晴台を過ぎて左手に注意して歩いていれば樹間ごしに見えてくる。
数回登山道を行き来して、地形図と実際の地形を照らし合わせ狙っていた付近から滝下に降りてみた。
滝はわずかに水が落ちている程度だが青空の下のむき出しの岩壁に細い水しぶきが跳ね返って雄々しくも美しい。

西多古知谷大滝
行者は見たか!?東多古知谷大滝「百間滝」に迫る
登山道に登り返して今度は東の横綱、百間滝をめざす。
一旦滝頭へ下ってから左岸に渡り大きく巻いて滝前に降りてみた。
滝は落口付近はゆるやかに流れ岩崖の上部で水は階段状に跳ねて中段で直瀑を落としさらに斜瀑となって裾を広げている。
滝頭と滝下に立ってやっと全貌を把握することができた。
御嶽信仰の行者たちは地形図もGPSもなしにどうやって滝を訪れただろうか。
でも彼らはきっと来ていると思った。
表登山道から百間滝を遠望した行者であればきっとこの滝と対話していたにちがいない。

百間滝
木曽御嶽大神御分霊社
下ってきた往路を登り返して表登山道にもどった。
二つの滝めぐりで二時間半ほど要してしまい山頂への道程はまだ三分の一しか進んでいない。
表登山道は距離は短いがその分急登が多くこれも不人気の一因なのかもしれない。
しかし前二回の御在所岳登山と比べて季節が進んだところもあり沢筋のブヨは少なく大滝見物は爽快であった。
スズメバチも多くは見かけていない。
あとはひたすらがんばって山上公園をめざすのみである。
やがて百間滝谷川上流の沢が登山道に近づいてきてこれをまたぎ越せば公園は近い。
公園に出たら雨量レーダーの北側を回って展望のよい富士見岩と見晴台に立ち寄ってみるのがおすすめである。
伊勢湾から菰野の町、山と見渡せて絶景だ。
展望所を回ったら御在所岳開山の祖覺順行者碑がある木曽御岳大神御分霊社を訪れ登拝を締めくくる。
大滝をめぐって表登山道を登ってきた充実感でいっぱいだ。

御嶽神社と御在所岳(左)
三度目の正直、望湖台
山上公園から御在所岳山頂と望湖台をめざす。
スキーリフトに乗って向かってみても楽しそうだが歩いた。
望湖台は今回で三回目。
雲が寄せてきていたが御在所岳三度目の正直でやっと琵琶湖まで望むことができた。

望湖台より琵琶湖を望む
武平峠道で下山
山頂に戻ってゆっくりと青空ランチを済ませ長者池のある八大龍王、御嶽大権現とめぐって武平峠道で下山する。
正面に鎌ヶ岳の眺望が開けたところで天差岩が現れる。
指を立てたような岩と尖った鎌ヶ岳が絵になって楽しい。

鎌ヶ岳と天差岩
ガレ場を慎重に下るといよいよ好展望ともお別れだ。
ふたたび樹林帯に入り武平峠を経由し国道に出ると出発地点の駐車場が前方に見えた。
ケーブルカーが楽しい 湯の山温泉 希望荘「自助の湯」
武平峠駐車場からスカイラインを下れば湯の山温泉「希望荘」はすぐだ。

湯の山温泉「希望荘」
日帰り入浴が午後9時まで楽しめて登山帰りに利用するにはぴったりである。
もちろん宿泊もできる。
この温泉には山上館とお風呂のある宿泊棟の間を行き来できるケーブルカーが敷設されている。
7月まで故障で運休していたが現在は復旧している。
ちいさなケーブルカーからの景色も抜群で自分でスイッチ操作して移動できるのがとても楽しい。

希望荘のケーブルカーが楽しい!
温泉も筆者利用時600円と格安で伊勢湾を一望できる露天風呂「自助の湯」からの眺めも最高だ。
ゆっくりと登山の疲れを癒やすことができる。
管理人山行日 | 2025年9月30日 |
武平峠駐車場発 | 7:20 |
武平峠駐車場戻り | 15:30 |