【乳岩峡しゃくなげコース】おむすび岩、がんこ岩を巡る名勝地ハイキング

がんこ岩 愛知の山、自然
がんこ岩

国の天然記念物、名勝に指定されている乳岩および乳岩峡は巨大な洞窟や天然の石門、大岩壁など驚嘆すべき自然の造形を随所に見せてくれる。

大洞窟や通天門などを一めぐりする巡回路へは乳岩峡の登山口からアプローチするのが一般的だが鳳来湖側からも「しゃくなげコース」の遊歩道を辿って訪れることができる。

この時期はしゃくなげの花にはもう遅いが「おむすび岩」や巨大な岩壁「がんこ岩」に寄り道しながら歩くしゃくなげコースは眼下に見下ろす鳳来湖の美しさやまるでショーケースに並んだおむすびのごとき山並みの楽しさ、間近で見上げる大岩壁の迫力などいつ訪れてもたのしめる。

乳岩を訪れるのなら洞窟や通天門と合わせてぜひとも歩いてみたいハイキングコースだ。

しゃくなげコースは乳岩からの下山ルートとしても使えるが、今回は鳳来湖側から乳岩に登山するルートで梅雨時期のコース近況を確認してみよう。

しゃくなげコースから望む上臈岩は巨大なカエルの顔のようだ

しゃくなげコースから望む上臈岩は巨大なカエルの顔のようだ

油断なく準備を整えてたのしむ乳岩峡しゃくなげコース

鳳来湖と乳岩峡を結ぶしゃくなげコースは現地では遊歩道として案内されているとはいえ岩稜帯歩きもあるりっぱな登山道である。

また乳岩を一巡するルートは鉄ばしごの直登もつづく難路になっているのでスリップや転倒には十分な注意と備えが必要だ。

ルート確認や準備、装備を入念に整えて出かけたい。

梅雨時期の現在なら天候の急変や暑さに備えて雨具や十分な水分、帽子やヘルメットなどの装備や保護具もよく検討して持参したいものだ。

特にヘルメットは格段に安全性が向上するし、かぶるだけで気持ちも引き締まる。

かぶり慣れるとかぶっていない方が落ち着かない。

筆者は一番におすすめしたい装備である。

しゃくなげコース登山口へのアプローチ

しゃくなげコースの登山口から乳岩へアプローチする場合は小滝橋駐車場まで車で入ると便利だ。

乳岩周辺に点在する岩場にはロッククライミングを楽しむクライマーも数多く入山している。

特に休日などは朝早くから駐車スペースが埋まってしまうため早めに到着するのがよい。

乳岩峡しゃくなげコース(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)

乳岩峡しゃくなげコース(出典:国土地理院ウェブサイト・地理院タイルを加工して作成)

おむすび岩で満腹!がんこ岩に感服!みどころと近況

今回は小滝橋駐車場に車を止め、宇連ダム脇を通り過ぎてしゃくなげコース登山口から入って乳岩をめざしてみる。

途中でおむすび岩に立ち寄ったのちにコースに戻り、三輪三等三角点への分岐を経由してがんこ岩を訪れてみよう。

がんこ岩からはコースをさらに少し下ると乳岩巡回コースの登り口に至るのでここから右回りで通天門、大洞窟と周回して最後は乳岩峡を下って小滝橋駐車場に戻ってくるルートだ。

小滝橋駐車場からしゃくなげコース登山口へ

午前7時まえに小滝橋駐車場に到着。

梅雨の合間に晴れた平日であったためか一番乗りであった。

尚、トイレ施設はないので事前に済ませておく必要がある。

小滝橋駐車場(早めに到着したい)

小滝橋駐車場(早めに到着したい)

車が停められれば一安心。

ゆっくりと支度してルーチンの準備体操を始める。

ヒル除けと防虫スプレーをもう一度足元にかけて出発。

ヒルは一カ所でも喰われると後々まで尾を引くのでとても苦手だ。

スパッツも持参しているが、防虫スプレーで登山靴は真っ白になってしまった。

今回はスパッツなしで勝負してみる。

駐車場の西で宇連川にかかる「小瀧橋」を北へ渡り宇連ダムをめざす。

小瀧橋を渡る

小瀧橋を渡る

600mほど歩くとカーブミラーの立つところで県道は沢筋をまたいで大きく左へU字状にカーブしている。

右手ガードレールの先に山中につづく浅い踏み跡があり、おむすび岩へ直登する登山口になっているので確認してみよう。

石垣の少し上、ブッシュの中に「登山口」と書かれた小さな札が見つかる。

このルートはおむすび岩へは短時間でアプローチできるが難路のため、歩くのはしゃくなげコースを経験してからにしたい。

おむすび岩直登ルート登山口

おむすび岩直登ルート登山口

今回は素通りしてさらに10分ほど県道を歩いて宇連ダムをめざす。

水資源機構の建屋の入口脇に公衆トイレがあって利用させてもらえる。

この先は乳岩峡の登山口に下りるまでトイレはないので済ませておこう。

宇連ダム

宇連ダム

節水が叫ばれた宇連ダムは5月30日に呼びかけが解除されたところである。

あとから水資源機構のデータを確認すると6月の雨で平年並みの貯水量に戻ってきており一安心である。

湖畔に建つ慰霊碑に立ち寄ってから県道をさらに先へ歩いてしゃくなげコース登山口をめざす。

右カーブの先に空に突きあがる岩峰が見えてくれば登山口は近い。

しゃくなげコース登山口へ

しゃくなげコース登山口へ

先ほどのおむすび岩への直登コースとは違ってしゃくなげコースの登山口には大きな看板が設置されているので取り付きを間違う心配はない。

一息入れ直して足作りも点検したらいよいよ登山開始だ。

しゃくなげコース登山口

しゃくなげコース登山口

しゃくなげコース登山口からおむすび岩

看板を見ると「乳岩まで2.5時間で行けます」とある。

急いで歩く必要はなく目安にしておけばよい。

今回のルートであれば出発がよほど遅くならなければ十分明るいうちに下山できる。

筆者はいつも足が遅く、今回はあとから乳岩までの所用時間を確認すると休憩も含めて4時間10分であった。

コースは登山口取り付きからシダ混じりの急登がつづく。

足元は見えるのでそれほど不安はないが夏場にかけてはもう少し草葉が茂りそうだ。

あっという間に汗が噴き出てきてまぶたにまで流れてくる。

手拭いをバンダナ代わりにして額の汗を止めてみるといつもの夏のスタイルになった。

バンダナが似合うようになりたいけれど日よけ、虫除け、タオル代わりと色々重宝する手拭い派を抜け出せない。

15分ほど登り、しゃくなげ遊歩道の道標を過ぎると岩稜にあがって宇連ダムや宇連山の展望が効くようになり景色がよい。

宇連ダムを望む

宇連ダムを望む

ふたたびシダ道に入り高度をさらに稼いでゆくと今度は鳳来湖の対岸に上臈岩の岩峰群が間近に見えるようになる。

上臈岩付近の山並み(冒頭写真)は鳳来湖に顔を出した巨大なカエルのようでとってもユーモラスでコース中の景観スポットになっている。

しゃくなげコースはこの先で90度東に曲がり一旦下って登り返すとおむすび岩への分岐点となっているところに「鳳来湖→」と書かれた小さな道標が見つかる。

道標は鳳来湖方面を示すものでおむすび岩を示しているわけではない。

しゃくなげの細木にぐらついた状態で付けられているのでこの分岐でおむすび岩の方角をよく確認して東南方向へ続いている浅い踏み跡を辿る。

おむすび岩への分岐

おむすび岩への分岐

分岐から小さなアップダウンを経て20分ほど歩けば岩稜にあがり視界がひらける。

右手に宇連山を遠望しながらもう少し進めばおむすび岩に到着だ。

眼下に見下ろす鳳来湖の向こう岸には三角の山並みが連なり、ショーケースに並んだおむすびのようで思わず笑ってしまう。

おむすび、おむすび、おむすびだらけだ。

この景色が見られただけで今回の山行は満腹至福だ。

一杯の冷たいお茶があるだけでとっても幸せな気分にさせてくれる。

まるでおむすび屋さん!

まるでおむすび屋さん!

おむすび岩からがんこ岩へ

おむすび岩から前述の分岐点にもどる。

しゃくなげコースはその名の通りコース中にしゃくなげの群生地が点在している。

今回は花の季節をはずしてしまったが、また来年のお楽しみにとっておこう。

ミツバツツジが二つ、三つ咲き残っていて慰めてくれた。

分岐にもどって東北へ進路をとると「シャクナゲ群生地帯」の立て札の脇を通り過ぎる。

さらに進むと今度は赤地に白抜き文字で「←鳳来湖」と書かれた看板がしゃくなげに結びつけられている地点にでる。

三角点分岐

三角点分岐

この地点は小さなピークになっていて地形図には道が表示されていないが、踏み跡が標高529.3mの三輪三等三角点へも続く三叉分岐になっているので進行方向には注意を要する。

しゃくなげコースからは少し外れるが、せっかくなので三角点も確認しておけばルートの知識も深まるので立ち寄ってみるのがおすすめだ。

三角点までは短い距離だ。

三輪三等三角点

三輪三等三角点

分岐にもどってしゃくなげ群生地帯を通ってさらに北上すると10分ほどで鳳来湖と鬼岩乗越、乳岩を分ける三叉分岐に到着する。

この地点にはしっかりした道標も立っているので迷うことなく乳岩方面へと下る。

鬼岩乗越、乳岩登山口、鳳来湖三点分岐

鬼岩乗越、乳岩登山口、鳳来湖三点分岐

コースは枝打ちされた杉林の沢筋を下るかたちとなり、雨が降った後ということもあってか足元が濡れているところもあるので注意しながら下ってゆく。

小さな蛾が多数飛んでいてうっとおしいがこちらがおじゃましている方かもしれない。

コース中にがんこ岩への道標は特に設置されていないが、先ほどの三叉分岐からコースを15分ほど下ったあたりまで来ると足元に小さなケルンが積まれているのを見つけることができる。

がんこ岩への分岐(ケルン)

がんこ岩への分岐(ケルン)

ここで浅い踏み跡が左に分岐しているのでこれを進めば立木の奥に巨大ながんこ岩が現れる。

がんこ岩を見上げる

がんこ岩を見上げる

今回はクライマーは誰も取り付いていなかったのでそばに近寄って岩に触れて見上げてみる。

岩の表面に点々と上へ確保支点のボルトハンガーが打たれているが、下から一つ目のハンガーに触るのもたいへんそうだ。

むかしは少しは登れたんだぞと負け惜しみをつぶやいて退散だ。

こんな岩壁をのぼっているクライマーに拍手!がんこ岩に感服!

驚嘆の通天門、乳岩大洞窟を周回

ふたたびケルンのあった分岐にもどって乳岩巡回ルートの登り口へと下る。

15分ほどでしゃくなげコースの乳岩側起点に到着するが大きな看板が地面に落ちてしまっている。

岩壁下に見える茶色い鉄階段を登って右回りで乳岩の周回を始める。

乳岩周回ルート起点

乳岩周回ルート起点

乳岩の鉄ばしごはこの3月に補強工事が完了して安心が増したが、出だしの鉄ばしご周辺は雨あがりでも水滴がシャワーになって落ちてきている。

ステップや手すりも濡れていてすべりやすいので慎重に登っていく。

はしご場が連続し、つえやトレッキングポールはじゃまになるだけなので予めしまっておいた方がよい。

また滑り止めのついた手袋も用意していった方が安心だ。

濡れたはしごを慎重にのぼる

濡れたはしごを慎重にのぼる

一つ、また一つと鉄ばしごを登っていくと通天洞で大岩の隙間をくぐる。

パーティーに初級者がいる場合は慎重に行動したい。

はしご場がつづく

はしご場がつづく

はしご場を過ぎるとコースは手すりのついた回廊となって天然の石門、通天門につづいている。

岩の下にぽっかりと空間があいて石橋がかかっているかのような巨大な自然の造形に圧倒される。

周回ルートは通天門の真下を通っているので崩れてこないように念じながら見上げてみる。

それにしても「でかい」。

通天門は太古の昔、乳岩川がもっと高いところを流れていたときに浸食、風化がすすんで大きな岩が崩れ落ちていって形成されたのではないかという。

驚嘆の通天門

驚嘆の通天門

通天門下を通過して鉄階段を下りて先へ進んでみる。

前方の岩壁に黒いへこみが見えてきて小さな洞窟になっている。

案内板は倒れて文字もほとんど判読できないほどになっているが目薬岩の洞窟で石仏が数体安置されている。

目薬岩

目薬岩

大洞窟へはこの目薬岩の洞窟前を通って少し進むと巡回コースが二股に分かれている地点にでるので右手の道に入る。

ここも特に洞窟への道案内はない。

右手の道の手すりに黄色いテープが貼ってあり「32」と書かれているので初見で訪れる際はおぼえておくとよい。

左手の道は巡回コースの降り口につづく道で分岐を見過ごすと大洞窟にはたどり着けないので注意が必要だ。

大洞窟へつづく分岐(右)

大洞窟へつづく分岐(右)

右手に進んでゆけば大洞窟につづく最後の階段下にでる。

大洞窟へ

大洞窟へ

洞窟の中へと長い鉄階段を最後まで登りきって振り返れば乳岩の由来である乳房状の鍾乳石と乳岩峡の渓谷美に感嘆するばかりだ。

高さ12m、幅18m、奥行き18mの大洞窟になっていて天井の岩の割れ目に沿って鍾乳石がまるく下がっているが、乳岩の鍾乳石は凝灰岩中の石灰分が溶け出して形成された過程やその形状がとても珍しいものだ。

乳岩大洞窟

乳岩大洞窟

乳岩峡周辺

洞窟から見える峡谷の景色を堪能して乳岩峡へと下山する。

鉄階段を下りる際はつまづきやステップの踏み外しに十分注意して下りたい。

前述の二股分岐までもどってコースを下れば乳岩巡回コースの降り口まで降りてくる。

さらに数分下って古びた東屋の前を通りすぎれば今度は明神山への登山道と合流するので乳岩峡登山口方面に下ればよい。

苔むした入仙橋を渡ったら後ろを振り返ってみたい。

半日かけて探訪してきた乳岩がとっても絵になっている。

入仙橋から見上げる乳岩

入仙橋から見上げる乳岩

旅の最後は乳岩川の清流とさじき岩の河床を愛でながら乳岩峡登山口へ向かう。

さじき岩はかつて川底だったところが大地が隆起して浸食がすすみ川底がさらに下がった結果、もとの川底が桟敷のような形で残ったものだ。

岩盤にポットホールもあちこちに認められてとても興味深い。

さじき岩を下る

さじき岩を下る

乳岩もしゃくなげコースも県内屈指の奇観、景観、絶景をたのしむことができる。

一方で付近の山域では事故もつづいているので準備と装備と体調体力を整えて出かけたいものだ。

それでは安心、安全登山でいってらっしゃい!

管理人探訪日 2025年6月12日
小滝橋駐車場発 7:03
小滝橋駐車場戻り 13:50

乳岩についてはこちらの記事でも紹介しています。

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