【三ツ瀬明神山乳岩コース】登山計画に生かす!参考にすべきハイカー達の活動データ

岩古谷山から望む三ツ瀬明神山 愛知の山、自然
岩古谷山から望む三ツ瀬明神山

遠くから眺めるアルペン的な風貌、懐に入れば迫力の大岩壁や驚嘆すべき自然の造形美を随所に内包し、頂に登れば天空の眺望がひらける三ツ瀬明神山

まさに奥三河の主峰、愛知の名峰というにふさわしい山です。

三ツ瀬明神山はハイキングや登山の初級者ならいつかは登ってみたい憧れの山であり、経験豊富な登山者でもこの山に魅了されている人は多いはずです。

人気がある一方で遭難事故もたびたび発生していてこの11月には乳岩峡で2件の救助事案があったことが登山口に注意喚起されています。

一件は70台女性の転倒負傷による自力歩行困難事例、もう一件は20台男性の道迷いによる救助要請でした。

筆者は今回、三ツ瀬明神山の代表的な登山ルートである乳岩コースを歩くとともにこの山に登るハイカーや登山者の行動はどのような傾向にあるのか調べてみました。

この記事を読めば自分自身が安心安全に三ツ瀬明神山に登山して大いに楽しみ、必ず無事に帰宅するためにはどんな計画と準備が必要なのか気づきを深めることができるはずです。

筆者自身の目と足で確認したルートの近況と合わせて紹介していますのでぜひ参考にして三ツ瀬明神山の素晴らしさを堪能してみてください。

三ツ瀬明神山の登山者模様

筆者は今回登山アプリのYAMAPの活動データの中から三ツ瀬明神山に出かけた登山者の記録を調べてみました。

調査した主な項目は次の項目です。

  1. 山行年月日と曜日
  2. START・GOAL地点と時間
  3. 登りと下りの経由地
  4. 登頂の有無
  5. 乳岩来訪の有無
  6. 登頂までの所要時間
  7. 登頂から下山までの所要時間

いかがでしょうか、多くの人の活動データを調査すればいろいろなことがわかりそうです。

山中で一泊した人の記録は除外した上で、直近一週間分のデータを集計してみると全部で54件のデータが集まりました。

登山アプリはYAMAP以外にもありますし、YAMAPの記録を非公開にしている人やそもそもアプリを利用していない人もいますから正確な入山人数まではわかりませんが、これら54人の方の記録は自分が出かけるにあたり参考にすべき情報や傾向、安心安全登山のためのヒントをたくさん示唆してくれています。

平日に出かけるということ:曜日に関する期待とリスク

土曜日、日曜日に山行者が多いであろうということは容易に予想がつきますが注目すべきは平日の入山人数です。

一週間分のデータを分析してみると土曜日、日曜日がそれぞれ18件(便宜上以下の説明では件数と人数は同じとします)でしたので、山行者の3人に2人は土曜日か日曜日に入山していることになります。

平日の月曜日から金曜日までの入山人数は多い日で6人、少ない日は1人でした。

この先厳冬期にかけては入山者はもっと減ってくるでしょう。

つまり平日に出かけるとルートもたくさんある中、誰かに山中で行き会う確率はそんなに高くはないのです。

三ツ瀬明神山には山腹途中でロッククライミングを楽しむ人も多く入山していますので岩場までの登山道でこれらの方と出会うチャンスはあります。

しかし平日にハイカーや登山者同士が山中で出会う人数はそれほど多くはないと考えておいた方が良いと思います。

これをどうとらえるかですが、筆者などは静かに歩くのを好みますのでいつも平日に出かけたいと思っています。

人出が少なければ景色や見どころも休憩場所も独り占めで楽しめることが多い一方で何かあっても他人に助けを求めることは困難になります。

筆者は今回平日の月曜日に出かけましたが、下山するまでの山中では2パーティの計4人にしか会いませんでした。

この内の2人は鬼岩の上手にあるハイカラ岩に取り付くロッククライマーでしたので登山中には実質1パーティの2人としか出会っていないことになります。

平日に出かけるときや単独で山に入るときはリスクへの個人の対応能力はより高いものが求められます。

登山計画を作成して一枚は留守番の家族へも残しておく下山したら直ぐに連絡を入れるというようなことは山行の習慣にしておかなければなりません。

夕方何時までに連絡をしないときは何かあったときだと家庭内で申し合わせておくことも山行準備の一つです。

また山中では電話は使えないと思っておいた方が良いですし、スマホのGPS機能を保つための予備バッテリーや万一ビバークを強いられた場合のエマージェンシーシート、救急用品、防寒具、ヘッドランプなどは必携の装備です。

他人の助けを期待して山に入るわけではありませんが、どんな登山上級者や経験者でも山中で歩けなくなったときには救助を待つしかありません。

人出の少ない日や場所に出かけるときは享受できるメリットへの期待も大きいけれどリスクも相応に高くなっていることに留意して準備したいものです。

馬の背からの展望も独り占めだが・・・

馬の背からの展望も独り占めだが・・・

人気の登山ルートは?みんなどこを歩いているのか

三ツ瀬明神山へのアプローチルートは奈根川方面からの三ツ瀬コース、乳岩峡からの乳岩コース、栃木沢や砥沢、白岩山方面からもルートがあります。

YAMAPの活動データのSTART地点、GOAL地点や発着時間について調べることで人気の登山ルートや活動の傾向がわかります。

意外だった三ツ瀬コース

最も登山者が多いルートは乳岩川からの乳岩コースです。

全体54件の内の40件、74%の人が小滝橋駐車場、乳岩峡登山口から入山していました。

そしてこれらの人は全員START地点へ下山しています。

ただこれらの中には後に解説しますが、山頂を踏まず乳岩のみ周遊して下山している人も含まれています。

次に多かったのが栃木沢からの入山で8件15%、その次が三ツ瀬コースの5件9%と続きます。

三ツ瀬コースはガイドブックなどではよく紹介されている登山ルートなのでもっと登られているかと思っていましたがあまり歩かれておらず意外でした。

乳岩コースに向かう林道はかつては登山口前まで車で入れましたが、現在では登山口の手前1.2kmほどのところで自転車以外の車両は通行止めになっていますので小滝橋駐車場に車を停めて歩く人がほとんどです。

乳岩コース登山口

乳岩コース登山口

登山口までのアプローチに往復40分ほどは余分にかかるようになりましたのでこの分歩行時間が伸びてしまいました。

尚、乳岩コースには登山者ばかりでなく、ロッククライミングを楽しみにやってくる人もたくさん訪れるので休日などは小滝橋駐車場に到着するのが遅いと満車になっていることもありますから注意が必要です。

ではみなさん何時頃から活動を始めているのでしょうか。

YAMAPの活動データのSTART時間が参考になります。

山頂を踏む計画なら朝駆けを!

乳岩コースで入山した前述の40人の内、山頂を踏んで下山した人は72.5%の29人います。

これら29人の内、午前6時台に行動を開始している人は11人、7時台が15人、8時台はぐっと減って2人、9時台は1人でした。

7割近くの19人が7時半までには一日の行動を開始しています。

つまり山頂を目指す多くの人たちは朝駆けしているのです。

乳岩コースから入るパーティーで朝のSTART時間が7時半よりも遅ければすでにその行動は大半の登山者より遅れていると緊張感を持つべきです。

駐車場には朝早く到着したい

駐車場には朝早く到着したい

乳岩を周遊するかしないか、周遊するなら登山時か下山時か

1500万年前の火山活動や長い浸食による自然の造形である乳岩の石門や巨大な洞穴は三ツ瀬明神山必見のスポットです。

驚嘆の石門通天門

驚嘆の石門通天門

前述の乳岩コースに入山した40人の内、乳岩に立ち寄らず下山しているのはわずか9人だけで8割近くの31人は乳岩を訪れています。

多くの登山者は乳岩も山頂も訪れていますが、登山口に近い桟敷岩や乳岩だけを目的に訪れるプランニングであっても十分に魅力的な山行です。

岩場やハシゴの直登は初めてというような人であればまずは乳岩のみチャレンジしてみるというのもおすすめです。

今回の調査で残念に思ったのは乳岩に向かった31人の記録の中に洞穴にたどり着けていないという記録が2件あったことです。

たぶん洞穴への二股で直進してしまったのではないかと思います。

現在洞穴に登る鉄バシゴや周遊コースの手すりには黄色いテープが貼られていてテープに連番の番号が書かれています。

乳岩に出かけるときは乳岩峡ハイキングコースの順路に沿って進み、31番の手すりを過ぎると二股になりますのでここで「32」と書かれた黄色いテープが貼ってある右側の道に入ると間違いなく洞穴に着きます。

分岐を右(黄色いテープに32とある)に入ると乳岩洞穴

分岐を右(黄色いテープに32とある)に入ると乳岩洞穴

最後の階段を登って振り返れば、朝日に照らされて金色の耳を持つ深緑色のネコがシルエットになり、まるで洞穴を見守っているかのような景色です。

乳岩洞穴

乳岩洞穴

乳岩コースは他のルートに比べると長距離のルートになり体力、技量も要するかなり上級者向けのコースとされています。

ただ乳岩へは三ツ瀬明神山への登山道横から周遊できるため乳岩までを目的地としたり、当初から乳岩周遊を外す登山計画にするのであれば、山行はぐっと楽になります。

乳岩からさらに山頂も目指したり、あるいは下山時に余力があったときだけ立ち寄るという選択もできます。

行動計画立案時点ではメンバーの技量や脚力がそろっているか初級者を含むのかで当初の計画を十分練っておき、山に入って計画通りに歩けていなければ乳岩周遊をスキップしたり登頂は断念して下山することも視野に入れておきましょう。

その判断ができるためには山頂までの所要時間と山頂から下山に要する時間を事前に把握しておく必要があります。

これもYAMAPのハイカー達の記録が教えてくれています。

山頂までの所要時間は?登頂、下山時間を計画する

YAMAPの地図で三ツ瀬明神山の登山ルートをみると小滝橋駐車場を出発して乳岩峡登山口、乳岩、鬼岩乗越、六合目と経由して山頂に登る所要時間は合計で4時間22分となっています。

また同じルートで下山する場合の所要時間は3時間37分です。

双方のこの時間には乳岩の周遊時間38分も含まれています。

登りで乳岩を訪れる人のほうが多いためここでは下りの所要時間からは乳岩の周遊時間を差し引くことにすれば、登りの所要時間は休憩抜きで4時間半、下りは3時間というのがおよその所要時間であることがわかります。

ではこれに対して実際の登山者たちはどのように行動したのでしょうか。

登りの所要時間を想定し登頂の目標時間を計画する

乳岩コースで入山し山頂を踏んで下山した29人の内、登りで乳岩を訪れた人は11人確認できます。

11人の登頂時間について最も早く登頂した人と最も遅く登頂した人を除いて平均してみると11時39分になりました。

また同様に計算した登りの所要時間の平均は3時間59分でした。

これには休憩を含んでいますから今回の調査対象者はかなり健脚ぞろいだった印象を受けます。

これらのことから登りで乳岩を周回して三ツ瀬明神山登山を成功させるためには、小滝橋駐車場を遅くとも朝7時半までには出発して12時前までに登頂を目指すのが一つの目安であることがわかります。

三ツ瀬明神山山頂

三ツ瀬明神山山頂

自分の普段の歩行スピードが平均と比較して早いのか遅いのかも勘案して登頂の目標時間を設定しておきましょう。

下りの所要時間を想定し山頂出発時間と帰着時間を計画する

今度は同じように山頂から六合目、鬼石乗越、乳岩峡登山口と経由して小滝橋駐車場に下山した人のデータを確認してみましょう。

このルートで下山した人の記録は7件確認できます。

まず山頂を出発して下山し始めた時間ですが、最も早い人と遅い人を除いた平均は12時17分で下山に要した時間についても同じように算出すると平均は3時間6分でした。

だいたい12時半までには山頂を出発して下山を開始し、午後3時半頃には駐車場に帰着しているイメージです。

これであれば明るいうちに下山できていますので目安にできそうです。

もし下りで乳岩を周遊する計画とするのであれば、登頂と山頂の出発時間については乳岩の周遊時間分前倒しの目標時間を設定しておきましょう。

転倒と道迷いへの備えは事前調査、装備確認、体調体力

最後に今回の救助事例の原因となった転倒道迷いへの備えについて三ツ瀬明神山の特徴に鑑みて触れてみたいと思います。

ここでは乳岩コースからの登頂ルートを3つのエリアに分けてどんな準備が必要かみてみましょう。

一つは乳岩周遊箇所、二つ目は乳岩から鬼岩乗越、胸突き八丁と経由して六合目まで、三つ目は六合目から馬の背を経由して山頂までと区切ってみます。

事前調査では他にもガイドブックやインターネットなどで幅広く情報収集しておくことが重要です。

乳岩周遊への備え

乳岩の石門、大洞穴へ行くには鉄バシゴの直登や急階段で岩場を越えて行かねばなりません。

転倒や滑落には十分な注意と備えが必要です。

ハシゴの直登が続く

ハシゴの直登が続く

両手両足を使って登りますのでトレッキングポールを利用している人は予めザックに縛り付けておきましょう。

ぐらつかずにうまく縛り付けることができるか、登攀のじゃまにならないか出かける前に工夫しておき現場で素早く対応できることが大切です。

階段の下りはスリップや踏み外しにも要注意です。

下りはスリップにも注意

下りはスリップにも注意

またこの時期手袋も必須装備です。

手袋は喪失するとすぐに下山も考えなければならないこともある重要装備です。

脱着しているときに風で飛ばされたり手の届かないところに落としたりしないように手首に回すゴム紐などを事前に縫い付けておくと安心です。

尚、必ず乳岩は周回順路に沿って右回りに回るようにしましょう。

乳岩~胸突八丁~六合目までをこなす基礎体力

乳岩からの登山道は本格的な登りとなり巨大な「鬼岩」や「ハイカラ岩」などの見どころを通過し、鬼岩乗越で細尾根に上がって胸突八丁へと向かいます。

さらに胸突八丁からのきつい登りをこなすとようやく三ツ瀬コースとの合流地点である六合目に到着します。

YAMAPの登山ルート地図でこの間の所要タイムを見ると130分かかりますが個人差の出るところです。

自分自身の体力、脚力、体調を勘案して目標タイムを設定しておき体力消耗を抑えたペース管理ができるかが鍵となります。

自分だけでなくパーティーで最も体力の無い人に合わせた行動が必要になりますからパーティーリーダーのマネジメントも重要になります。

この間のルートは木の根が地表をうねり歩きにくい箇所も多いので体力を大きく消耗した状態で下山していると転倒スリップの危険が高まります。

2時間から3時間のきつい登りや下りを継続できる基礎体力が備わっていないと厳しい登山になりますので普段からの体力トレーニングも大切です。

また道迷いは登りよりも下りで多く発生します。

疲れていると注意力が散漫になり目印を見落としたり、踏み跡を外しやすくなります。

GPSや登山アプリなども最大限活用して適宜ルートを確認しながら下山するようにしましょう。

胸突き八丁からのきつい登り

胸突き八丁からのきつい登り

六合目~馬の背~山頂間 好展望も緊張を緩めない

六合目から10分ほど登るといよいよ鎖場が始まります。

鎖場が始まる

鎖場が始まる

三つの鎖場をこなし痩せ尾根に上がり「明神山頂▶」右を示す道標で一旦右へ下って巻くと鉄バシゴが現れます。

これを登れば馬の背に到着して鳳来の山並みや湖、遠く三河湾まで光り輝く大展望が広がります。

馬の背から痩せ尾根を通過する

馬の背から痩せ尾根を通過する

展望もすばらしいですが馬の背とその先はさらに足場の悪い痩せ尾根になっており転落には要注意の箇所が続きます。

特に風の強い日や荒天時はちょっとしたつまずきやふらつきが大事故につながることがありますので緊張感を維持して通過しましょう。

ロープの張られた要注意箇所を通過すると9合目となり山頂方面を示す道標を辿れば最後の鉄バシゴが現れます。

これを登ればようやく山頂に到着します。

予定通り歩けているか確認して展望台で青空ランチです。

 

登山ではいくら準備していても起きてしまう事故もありますが、入念に準備を整えて計画通り必然的に無事下山してきたときの充足感は何ものにもかえがたいものです。

それでは安心安全登山で三ツ瀬明神山へ行ってらっしゃい!

日の落ちる前に帰ってきた

日の落ちる前に帰ってきた

管理人山行日 2024年12月2日
小滝橋駐車場発 6:30
小滝橋駐車場戻り 16:45

 

 

 

 

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