愛知県新城市と豊橋市、静岡県浜名区と湖西市にまたがり両県の県境に弓状に連なる弓張山地。
その弓張山地の西南端近くに位置する神石山は標高わずか325mの低山でありながら浜名湖や太平洋方面の美しい景色を望むことができるとあって豊橋市側からは豊橋自然歩道やその支線の自然歩道が、また湖西市側からは湖西連峰ハイキングコースなどが整備され地元でも人気の山です。
この山域は数年前、自然歩道の維持管理の困難さから一部歩道の廃止が報道されたり話題になったりしましたが、幸いにも関係者や団体の努力でその多くは存続しています。
私たちハイカーは歩くことで自然歩道が廃れないように地域の魅力を発信、共有していきたいですね。
今回は市中の登山ガイドブックなどではなぜかあまり紹介されていないのですが、すばらしい眺望を得られる神石山周辺の展望スポットをめぐって山頂を目指すとっておきの登山ルートと神石山の楽しみ方について紹介してみたいと思います。
神石山登山口へのアクセス
今回の登山ルートは存続の危機が騒がれた多米自然歩道を辿って豊橋自然歩道本線上の多米峠に上がり神石山を目指すルートです。
多米自然歩道の登山口となる多米峠休憩所へは車でアプローチするのが便利です。
同休憩所は県道4号線多米トンネル西側のヘアピンカーブの内側にあります。
青空ランチアドバイス
多米峠休憩所には広い駐車場とベンチが設けられていて、遠く三河湾も見通せる休憩スポットになっています。
駐車場内にはトイレもあるのですが上水が引かれておらず断水していることが多いです。
トイレにはポリタンクに入れた水が残置してあって地元の方が清掃もしてくれているので小用は足せるのですがペーパーは流せないと思った方が良いです。
洗面の水も出ませんので登山前後の手洗い用の水を車に積んで出かけると安心です。
神石山周辺の山域理解、自然歩道やハイキングコースについては豊橋市の「豊橋自然歩道ガイドブック」や湖西市の「湖西連峰ハイキングマップ」などの資料が参考になります。
資料はこちらの各市ホームページで参照できます。
また、今回の登山ルートでは道標が設置されていなかったり、地形図に記載が無い歩道も歩くため読図が必要となる箇所があります。
道は踏まれているためそれほど心配はありませんが事前にルート確認の上、地図と方位磁石、地図アプリなども持参してお出かけください。
尚、展望スポットは大きな岩や岩盤上にありますので小さな子連れでの山行はおすすめできません。
神石山を楽しむ登山ルートの近況と展望スポットを紹介
多米自然歩道は駐車場が登山口に近く、最も短時間で豊橋自然歩道の本線に上がることができて、また本線からのエスケープルートにもなり得る心強い貴重なルートです。
愛知県側から神石山へ登るには葦毛湿原・岩崎自然歩道がよく歩かれていますが、神石山周辺の展望スポットをめぐるなら多米自然歩道を選択するのが好適です。
今回の登山ルート(参考所要時間):
多米峠休憩所(2)→多米自然歩道登山口(25)→多米峠(35)→中尾根分岐(5)→パラダイス(30)→大岩(55)→ラクダ岩北西ハイキングコースに合流(20)→神石山(5)→炮烙岩(西テラス)(7)→神石山(10)→太田峠跡(5)→雨宿り岩(20)→中尾根分岐(35)→多米峠(20)→多米自然歩道登山口(2)→多米峠休憩所
*所要時間には休憩を含んでいません。所要時間は登山初級者が無理なく歩ける平均よりゆっくりめで想定していますので各自で調整してください。
多米自然歩道で豊橋自然歩道本線へアプローチ
多米峠休憩所から多米トンネル方面へ車道を少し歩くと多米自然歩道の登山道入口です。
ここから多米峠を目指します。
多米峠までは20分から25分ほどです。
登山口道標の右手にある手すりのついた階段を登り多米自然歩道に入ります。
赤土にごろごろと石の転がる山道は所々で水が抜けず足元があまりよくありませんのでスリップに注意して登ります。
多米自然歩道の道標を二つ目、三つ目と過ぎると擬木の階段が現れます。
この地点で二股になっていて道標も地面に倒れてしまっているのですが、擬木階段を一登りすれば豊橋自然歩道本線上の多米峠に到着します。
この時期多米峠や自然歩道の本線上ではアサギマダラが出迎えてくれるかもしれません。
知る人ぞ知る中尾根パラダイスの絶景
多米峠に上がったら豊橋自然歩道を右へ南進しますがベンチもありますから一服入れていきましょう。
ルートはまず中尾根分岐を目指します。
多米峠から中尾根分岐までは35分から40分程度見ておけばよいでしょう。
送電線下の尾根筋を一つ目の鉄塔、二つ目、三つ目と通過しながら南下していきます。
豊橋自然歩道「ホ35」番の道標からさらに5分ほど進めば中尾根分岐に到着します。
分岐には地面際に背の低い道標と知波田駅方面を差し示す黄色い道標が立っています。
少し離れた所にももう一つ「←大岩/広域農道」と「←多米峠・神石山→」を分ける道標がありますのでこれも確認してここから「←大岩/広域農道」方面へと向かいます。
最初の目的地である中尾根パラダイスはこの分岐から緩やかに尾根を下って5分ほどの距離ですが、目印となる石積のある箇所で右へ曲がりますので右手の地面に注意を向けながらゆっくり下ると良いでしょう。
数分で低い石積みが2カ所現れてその間から浅い踏み跡が奥へと向かっていますのでこの枝道に入ります。
林の先へと抜ければ朝日に光り輝く浜名湖が眼前に飛び込んできます。
右に目をやれば目指す神石山が間近に望め、雲が無ければ左手の山並みの奥には富士山も見える最高の展望スポットになっています。
景色に見とれながらしばし休憩していきましょう。
「大岩」へ大展望をはしごする
二つ目の展望スポット「大岩」へ向かいます。
中尾根パラダイスから前述の石積分岐に戻り、引き続き「←大岩/広域農道」方面へ下ります。
尚、大岩に行く途中には小さな展望台もありますから立ち寄っても構いません。
立木に道案内の表示もありますのでルートは容易にわかるはずです。
さて、尾根伝いに下ってゆくと「←大岩約20分」、「中尾根分岐点約25分→」と表示された湖西連峰ハイキングコースの道標が現れますのでここで大岩方面へ左に折れてさらに進めば正面に大きな岩と道標が見えてきて「大岩」に到着します。
展望を得るには大岩に登りますが高いところが苦手な方は無理しないように転落には十分注意してください。
足元に気をつけて岩の上にあがれば、はるかに太平洋も見渡せる爽快な展望が待っています。
林道歩きでわかる神石山の清水
大岩(204.8m)で二度目の展望を楽しんだら林道(下図青線)と山道(同赤線)を歩いて神石山(325.0m)へ向かいます。
林道は大岩のすぐ南側を東西に通っています。
大岩の西側に立つ道標からほんの少しだけ南へ踏み跡を辿るとすぐに林道に降り立つことができます。
登山ルートは神石山の東側の山腹を東から南西方向へ弓状に回り込みラクダ岩から登ってくる湖西連峰ハイキングコース(下図緑線)に出合ったら北上して頂上を目指します。
ルートの約半分はほとんど高低差のない林道ですのでのんびりと歩くことができます。
尚、赤線の山道は地形図には現れていませんので後述する通行ポイントについて事前に把握しておく必要があります。
ヤマップなどの登山アプリではこの山道も表示されていますのでこれらを利用すると便利です。
林道をゆくと二カ所ほど山腹から沢水が流れ落ちている箇所を通過します。
稜線も近いのによくこれだけ水が出ているなと感じるところです。
先へ進むと林道は赤線の山道と出合う地点で左へ180度カーブしていて曲がり角に大昭和製紙の白い看板が立っています。
ここで看板の右手奥に見える沢を渡ると山道に入ることができます。
この地点を間違えなければあとは一本道で湖西連峰ハイキングコース(緑線)に合流できます。
合流地点に道標はありませんがハイキングコースと山道は明瞭なT字路になっていますので容易にわかります。
T字路分岐で右手の山頂方向へ進めば5分ほどで鉄塔下を過ぎ、さらに15分ほど最後の急登をつめると神石山山頂に到着します。
ずっと座っていたい炮烙岩(西テラス)の眺望
広い神石山の山頂にはたくさんベンチがありますので青空ランチにするのがおすすめです。
しかし人気の山ですので多くの人がいて適当な場所に座れないこともあるかもしれません。
そんなときは山頂の西側にある炮烙岩(西テラス)をのぞいてみるのがおすすめです。
神石山の山頂からは浜名湖、太平洋方面をよく見渡せますが、炮烙岩は豊橋市街、三河湾方面を望むすばらしい展望スポットになっています。
神石山登山者にあまり知られていないようなところがあり、訪れる人も少なく景色をながめながらずっと座っていたくなるようなイチ押しの展望スポットです。
西テラスへは山頂の休憩ベンチ後ろにある中電のL型アングル標柱39番の黄色い標識の前から林の中へ続いている薄い踏み跡を5分ほど西へ辿れば行くことができます。
西テラスは大きな岩盤になっています。
あまり端に寄りすぎないように注意してゆっくり腰を下ろし青空ランチにしましょう。
筆者おすすめの青空ランチスタイルはこちらの記事で紹介しています。
雨やどり岩を経て下山
テラスから神石山山頂に戻ります。
山頂に戻らず南北に通る巻き道から下山という選択もできますが、ひとまずテラスに降りてきたときの道を忠実に山頂へと戻ります。
山頂に戻ったら今度は豊橋自然歩道を北上して朝方に通過した中尾根分岐を目指します。
山頂からのルートは真っ直ぐで明瞭なので迷うところはなく約10分で太田峠跡を過ぎ、さらに5分ほどで雨やどり岩という大きな岩が現れて見どころになっています。
雨やどり岩からも真っ直ぐ豊橋自然歩道を辿れば20分ほどで中尾根分岐に到着します。
これで神石山を周回して中尾根分岐に戻ってきました。
あとは往路を辿って多米峠、多米峠休憩所の駐車場へと下山します。
爽快な展望ハイキングを楽しめる神石山。
次回お出かけしてみてはいかがでしょうか。
魅力たっぷりな豊橋自然歩道の山についてはこちらの記事でも紹介しています。
管理人山行日 | 2024年11月3日 |
多米峠休憩所発 | 7:30 |
多米峠休憩所戻り | 13:40 |